くるみ /深見じゅん（全17巻）

 この漫画のオススメポイント

一生懸命いきていけば、きっといいことがある。ちゃんと向かい合えば分かりあえる。世の中、そんな単純じゃない。でも、漫画の世界でぐらい正直者が幸せになれるお話があってもいいじゃない？
今まで、他人の庇護の下で生きてきた31歳の（元）主婦くるみ、勇者になるための冒険、頑張ります！

どんな時にオススメ

ほのぼのした気分になりたい時。漫画喫茶で半日程度の漫画を読み切りたい時。心がすさんでいる時。「がんばったらいいことがある！」そう信じたい時。 

私的感想

深見じゅんの漫画は、絵が一昔前な感じで手に取りにくい人も少なくないと思うのですが、それは勿体ない。「ぽっかぽか」とか「悪女」とか他作品も大のオススメなのですが、今回は「くるみ」で。
主人公のくるみは、学生の時のイジメがきっかけで、消極的な性格に。結婚して、強い旦那さんが守ってくれていたけど、ある日、魔法使いのおばあさんに言われて、その関係を望んでいなかった事に気づかされる。その足で、東京に出てきて、定食屋の住み込みに・・・

ヒロインが31歳の主婦ということで、感情移入しづらいかもしれません。でも、若い子は「大人になったらどう生きていくのがいいのか」、同世代の子は「自分が直面している問題にどう対応すればいいのか」、そして上の世代は「自分はちゃんと生きてきてるかな？」と。
テレビの中のアイドルになることはできなくても、くるみの気持ちで生きていけば気持ちが少し楽になれると思うのです。ある意味、くるみを指針として、幸せな女性像を描くことができるんじゃないかと思うのです。
と、いってもそんな堅苦しく考える事はありません。くるみが持ち前のパワーと愛情で、いろんな境遇の人の心を癒してあげるのを微笑ましく見守っていれば絶対なにか伝わるはず！。
そして、男性は、女性がこういう風に生きていけるよう支えてあげられる男でいてほしいな、と思います。そうしたら、分かってくれる女性はきっと現れるはずですから。

展開が上手くいきすぎてる感が否めませんが、くるみのパワーに巻き込まれた方が勝ち（漫画は楽しまなきゃ！）。そうしたら、読了後はいろんな事が優しい気持ちで見れるようになると思いますよ、きっと。

ちなみに、ストーリーの各所のRPGゲーム仕立てな感じは、個人的にはあまり馴染めませんでした。そこが個人的にはちょっと残念な感じです。

若干の…ネタバレ

 深見じゅん先生の作品は、ストーリーの展開が早すぎもせず遅すぎもせず、綺麗に繋がっていく。派手な技法に頼らずとも、登場人物の言葉を信じて積み上げている感じ。

くるみが離婚するまでの経緯もそうだし、一人一人の悩みを解決する過程、そして、くるみに多くのものを与えた会社ブレイクオフの突然のクビ宣言も。
「わたしなんて・・・」と諦めていた31歳の主婦が、自分にできることをきちんとやって積み重ねていく。そして、新たな冒険に向かっていく。
大事なのは「愛」と「勇気」。漠然として難しい。なら、頑張ってるくるみのように、１つ１つをちゃんとやってみよう。きちんとしたごはんを作って食べる。部屋を片付ける。挨拶する。そうやって、きちんとした日常を過ごすことが自分を作り上げてくれるはず。

にしても、結婚に違和感をおぼえてる主婦って少なくないんだろうな。この本で・・・「私もやればできるかも！？」なんて脱主婦しちゃったら、たいへんな事になっちゃうかも。できれば・・・ご夫婦で読んでみてほしいなぁ。

そしたら、ご主人は
「オレ、おまえに不自由な思いさせてないか？」

って、気にかけてくれたりしないかな・・・