完結漫画ブログ

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うさぎドロップ/宇仁田ゆみ(全10巻)

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 この漫画の概要・オススメポイント

30歳の大吉が、じいちゃんの訃報をきいて駆けつけたら知らない女の子がいた。りんという6歳の子はなんとじいちゃんの隠し子!(つまり大吉のオバサン)。親戚一同が、りんを預かることを嫌がり施設にいれよう画策していることに腹を立てた大吉は、そのままりんを預かることに。いきなり始まった二人の生活。はたしてどうなることやら!?

私的感想

ある種、逆ひかる源氏というか。大吉は幼女趣味ではないものの(むしろ、女・子供が苦手!)、女の子を育てていく独身男がどうなる?!といった、ほのぼのストーリー(ただし前半に限り)。

死んだじいちゃんの若い頃に似ているという大吉は、りんに懐かれるのも早かったが、女の子を育てるということに悪戦苦闘。遠くの保育園まで子供かついで走って、会社に残業の少ない部への異動願いをだして、部下との飲み会も出来ず・・・子育てっていろいろ犠牲にすること?子供たちはみな親の犠牲で育ってるの?と、悩むダイキチ

それでも、毎日毎日すぎていって、朝、オネショの布団を片付けたり、お弁当つくったり・・・本当に大変。でも、そんな大変な生活をしているうちに、大吉の部屋が生活がすこしずつちゃんとなってきて・・・。家に帰ってきて電気がついてることにホッとしたり。子供のおかげで、成長できるってあるんだなぁ、と。

ところが後半戦。いきなり、りんが高校生になっているから話がおかしくなってくる。年頃の女の子ですからね。恋のひとつやふたつ・・・あんな小っちゃかった、りんちゃんがーって思いながら読んでると最後は・・・

ぶっちゃけ、りんの周りにいる男なんて限られてるので・・・まぁ、そのあたりがね。ラストにいきなりIT会社の若手社長が出てくるはずもなく・・・。

ネットの評価も、肯定的な意見が多い中で、「二度と読みたくない」とか「読んで後悔。時間を返せ」、「即売り決定」といった強い声も少なくなく。

良くも悪くも何かが残る作品なんだと思います(ネタバレせずに、この悩ましさを表すのは難しいなぁ・・・)

若干のネタバレ

前半は間違いなく名作なんです。子供と向き合う大吉の様子は、オッサンだけど美しい。問題は後半。というか、ラスト。男と女がいて、長い間いっしょにいたら、それは恋になるのだろうか・・・という事。

血縁があろうが無かろうが、大事に積み上げてきた家族の中に性愛を持ち込むのは生理的に不快という人が少なからずいるのは分かる(漫画ではキレイな関係しか描かれていなかったけど、読み手が想像できる結論ってのは厳しい)。近親での交わりを拒絶するのは本能でしかないから。どんなにいい話であろうが、これを本作のラストとするのは許せないという強い声も良く分かる・・・。

大吉だって、作者だってそんなのは良く分かってる。それでもこの結論になった。他にいなかった、お互いに唯一無二で・・・大吉は大人だからきちんとできたけど、りんには「好き」という気持ちを無くすような選択肢が無かった。りんの事を何よりも大事にしてきた大吉は悩みに悩んで、りんに応える・・・血縁じゃなくても育ての親である自分が、数多くの批判を覚悟で、これからも守っていく事を選んだ・・・と。親子から夫婦という名前を変えたとしても、二人の気持ちは変わらずに温かく過ごしていけるんだろうな。

でも、それはフィクションならありだろうけど、リアルならちょっと物足りないって思うんじゃないかなぁ・・・夫婦はいつか落ち着いて家族になるだろうけど、最初ぐらいは濃密な時間を過ごしたいもんじゃないのかしらね?

・・・と、賛否両論ある作品でしたが、前半(りんが小さい頃は)みなが名作という展開でしたし、「育ての親がなんて生理的にムリ!」って人でなければ、後半も悪くはない・・・。ただ、前半が良すぎたんだろうなぁ、ってのはあるかもしれません。