完結漫画ブログ

完結漫画に特化したブログです。マンガ喫茶のお供にお役立てください

僕とルネと青嵐/文月晃(全3巻)

f:id:totaraka:20180804173658j:plain

この漫画の概要・オススメポイント

美大生としてマイペースに過ごしていた創一は大学で憧れの画家・青嵐(せいらん)が描いた一枚の絵に出会う。創一はその絵を見て青嵐の元に研修に行くことを決める。青嵐の家で門前払いされた創一は一人の少女ルネに出会う。

芸術の狂気と、少女の健全さのバランスが絶妙な本作。3巻で話をバッチリまとめてくれます。

私的感想

全3巻。打ち切り?という声も無くもないみたいですが、無理矢理きりあげた感は無いので、おそらく最初からこのボリュームだったのだと思います。最初は、主人公の芸大生、創一(ソーイイチと、青嵐(青嵐)先生だと思っていた老人とその孫のルネを中心に、天才肌のルネの無邪気さや絵画への姿勢、その背景が描かれます。次に、その背景にある少女の苦悩に優しく寄り添うソーイチの姿に二人の関係が少しずつ温かなものになっていく様が描かれます。しかし、ルネの母の登場により、ルネの心は激しく揺さぶられます・・・というところで、3巻。凄くシンプル。でも、その3巻の中に、芸術にハマった人間の偏狂さ、子供の無邪気さと強(したた)かさがきちんと詰まっていて、そしてルネが可愛い。少女性愛の人には物足りないかもしれないが、普通に子供の可愛さが詰まってる。子供が出てくる作品ずるい。

正直、物足りなさは残ります。ですが、これはいい具合の余韻になって3巻という冊数でバッチリ閉めてくれた事を前向きに捉えていいと思います(というか、ムリに話を広げるために人を増やしたりしたらバランス崩れちゃいますからね)。

漫画喫茶で1時間ちょいぐらいで軽く読むつもりが、結構いいパンチをくらってニヤニヤしてしまった…そんな感じの嬉しい作品でした。

www.hakusensha.co.jp

若干のネタバレ

私的感想には書けませんでしたが、いきなりネタバレを書いてしまいますと・・・

青嵐の家に訪れた主人公のソーイチは、その家の主である老人に門前払いされ、一人の少女ルネに出会います。ルネと親しくなったソーイチは、ルネが描いた絵が青嵐の作品であることに気づき、ルネの研修生になります。しかし、その後・・・ルネは母の絵に影響を受けて作品を描いていることが分かります。

つまり、青嵐はルネではなくルネの母親ということになります。

で、この母親は子供に愛情を感じるぐらいなら、絵画に向き合いたいと思うような芸術家。これを酷い親と思う人もいるかもしれませんが、何かを突き詰めたいという人って、そういうもんなんだと思います。

ただ、子供は可哀想だな・・・とは思いますが、きちんとルネは乗り越えます。それは、その隣にソーイチがいたから。でも、本作で、そこに生々しい恋愛の香りは現れません。まだ、恋にもならない・・・そんな二人ですから。

本作の設定は、ありきたりと言われてしまうかもしれませんが、この作品の肝は設定よりも何よりも、ソーイチとルネの二人の関係性に尽きると思います。とにかく、微笑ましい。斜に構えた小難しい作品評なんか気にせず、その微笑ましい二人と様々な顔をみせるルネの姿をシンプルに楽しんでほしい作品です。

気持ちのいい作品でした。