僕らの17-ON!/アキヤマ 香(全4巻)
この漫画の概要・オススメポイント
僕らの17-ON!。タイトルからも想像ができるかもしれませんが、高校生の俳句部の物語です。
この本を一言でいうと「さわやか」。
で、欠点は一言「短い」。
個人的に、テンポのいい漫画は好きなのですが、この本はテンポが良すぎて、もっと膨らませればもっと面白くなるのにー、と、これが唯一の欠点。 それ以外は、ホントに「さわやか」で、気持ちのよい漫画だと思います。
最初は憧れの女性に惹かれた・・・という俳句素人の主人公が、恋も俳句も真剣に打ち込んでいく姿は本当に清々しさ以外の言葉が見つかりません。 俳句はちょっと敷居が高いや・・・と思う人も、選び抜いた言葉を繋いで言いたい事にきっちりハマる感じの気持ちよさを一緒に楽しんでもらえる作品だと思います。
どんな時に読みたい?
漫画喫茶で2~3時間で読み切る漫画を探してる人。爽やかな青春漫画が好きな人。俳句に興味のある人。ドロドロした漫画はちょっと読みたくない時。頑張る姿に応援されたい時
私的感想
テレビでの俳句の番組が人気だったりするので俳句の注目度は上がっているのかもしれませんが、この漫画も俳句の楽しさを十二分に教えてくれる本です(といっても、そんな小難しい話ではありません)。
最初は気になった子が俳句をやっていると知ったから・・・そんな不純な動機だった主人公の理央。
その後、その子に彼氏がいるのを知って・・・
でも、初めての句が褒められて、ジクソーパズルのように言葉がはまった時の気持ちよさを知ってしまった理央は、俳句甲子園に向けて仲間たちと切磋琢磨していく。
俳句の勝ち負けは、ただ俳句を詠んで評価するだけでなく、相手がどうしてそれを詠んだのかをディベート(質疑)し、そのやり取りを踏まえて審査員が判定するのですが、詠み手のミスを質疑の中で仲間が助けたりする姿は静かだけど熱く、俳句という一見地味そうなモチーフを扱っていても十分に魅力的で、知らず知らずのうちに物語に引き込まれていくことかと思います。
また、何かに向き合って打ち込むことが苦手だった主人公が、きちんと俳句に向き合っていく姿や、俳句はうまくても仲間とうまくやれることができなかった山本が仲間を信じていく姿など、彼らの成長していく姿、ライバルの心の闇が見えたりする様は、コマとコマの静かな繋ぎの中で、ちょっとした少年誌のバトル漫画な感じがしてワクワクしてもらえるのではないでしょうか。
成長した主人公が、片思いの彼女に自分の言葉を届けようと頑張る姿がとても好印象なさわやかな漫画でした。
若干のネタバレ
雑誌「JOUR」はターゲットが主婦ですので、なかなか触れる機会が少ない雑誌だったりします。 連載作家を追いかけてみても、「セフレの品格」湊よりこ、「さぁ、ラブの時間です!」上杉可南子・・・私が浅学なだけかもしれないけど、知ってる作品がなかなか少なかったり(双葉社は男性向けは熱いんですけどねぇ)。他の連載作品と比較すると、無駄に爽やかな本作。単行本じゃなく雑誌で読んでたら、もっと爽やかに感じたかもしれません。
さて、本作。「俳句」という地味めなテーマですが、きちんと王道の構成になっています。簡単に挙げると・・・
- ヒロインにあこがれる男の子が主人公
- 天才肌な孤高の仲間がいる
- 戦いの中で、弱小クラブが成長していく
- 幼馴染のライバル出現
- 圧倒する敵の存在
漫画の王道の設定がきちんと書かれているので、「俳句」という題材でも安心して読むことができるかと思います。
結局、大会って優勝チーム以外はどこかで負けてしまうわけで、結局だれもが上手くいくばかりでは無いわけですが、ラストではきちんと描かれています。試合も恋も、結果は出てしまう・・・それでも、彼らなりの答えをみつけて、前をみていく・・・そんな最後まで気持ちのよい物語をみせてくれる作品でした。
拙作ですが、最後に、この漫画で最後の兼題になった「蜻蛉」で一句。
空を切る蜻蛉 一ヶ年を のせる