完結漫画ブログ

完結漫画に特化したブログです。マンガ喫茶のお供にお役立てください

ちひろ/安田弘之(全2巻)

 

f:id:totaraka:20180511061510j:plain

この漫画のオススメポイント

風俗嬢のちひろさん。この人に釣り合う男はいるのか?男ならこういう女に出会ったらその良さに気付いてほしいし、女なら彼女みたいに芯のある女性になってほしいと願わずにはいられない一作。
あなたを縛るものは何ですか?『自由を楽しむこと』できてますか?

私的感想

個人的には、連載中の「ちひろさん」の方が好きだったりします。それは、「ちひろさん」の方が、風俗をやめた後のちひろさんを描いているので、風俗の世界だけでなく広くちひろさんの人生観がみれることが大きな理由です。ですが、本ブログは完結漫画に特化してるので、「ちひろさん」では無く「ちひろ」の方を紹介しますが、「ちひろさん」を読んでからの方が、この世界に入りやすいんですよね・・・ですので、それぞれの1巻を読み比べて、どっちから読むかを決めるなんて贅沢な選択をするのもありかと。風俗業界を描いてるので、人によっては嫌悪感が先行しそうな方は、「ちひろさん」をご覧ください。

さて、「ちひろ」でも「ちひろさん」でも、どちらの作品にもいえるのですが、とにかくヒロインのちひろが常に自立した一人の女性として楽しく生きている姿ががホントに魅力的に描かれています。。傍から見れば彼女の生活は寂しそうに見えるかもしれない。でも、彼女はそんなの気にせず、逞しく生きている。こんなに逞しく生きている人、男の人でもレアじゃないかしら

普通に生きていれば、いろんなものに縛られる。友達との人間関係や、家庭に職場、虚栄心に、生きていくためのお金、寂しい時に寄りかかりたい相手・・・でも、ちひろさんは、そういうものから自由だったりする。『自由』って聞こえのいい言葉だけど、本当に自由ってのは、いろんな犠牲を伴う。でも、彼女には悲壮感がない。痛々しさが無いどころか、清々しささえ感じる。だから参る。飄々と生きてるけど、強くて格好いい。ちひろさんの恰好よさを少しでも見習うことができたらなぁ・・・と願わずにいられない。

ちょっと、説教じみた感じや、「人生悟ってます」みたいなけらいが強く、話自体に盛り上がりがあるわけでもないですが、読み手の人生に何かしらの武器をくれるはず。出会ってよかったと思える一作だと思います。

エレガンスイブ秋田書店)連載ということもあり、ターゲットは大人の女性(どちらかといえば、既婚者)と、若い人には難しい面もあるかもしれません。ただ、酸いも甘いも分かってきた世代には、頷けるポイントも多く、もっと若いうちに出会っていたら・・・と思うのではないかと思います。 http://www.akitashoten.co.jp/comics/425310276X

 その他

精神的に自由なことを選んだちひろの生き方は潔い。と、同時に、どこか壊れている感じもしなくもない。それでも、彼女に不確かさや、虚無感といった負の感情はほとんど見当たらない。時々、負のちひろがでてきても、それを楽しめる彼女の姿には頭をガツンとやられるような衝撃があります。 

男の描く身勝手な理想の女性像、という感想も多くみられましたが、男にとっては、こんな女性は扱いきれないと思います。どちらかというと、人としての姿勢に惚れる・・・そんな感じです。風俗という世界を描いた作品だから、そういう風にみられちゃうんだとしたら、勿体ない

どんな社会でも、まわりに合わせる事は必要だったりする。それを辞めてしまったら、周りからどう扱われるか・・・。でも、ちひろは、それを選んだ。多くの人が選べなかった道を彼女は選んだ。でも、こんなのがうまくいくのは、漫画の世界だから。漫画の世界とはいえ、こういう生き方を貫いた先がどうなるかを見届けたいと思ったりする。

漫画の世界だから、ちひろの絶妙なバランスが成立する。その小気味よさは、なかなか他のマンガでは見当たらない感覚。

「ちひろさん」では迷いの少ない彼女ですが、「ちひろ」は普通に人間関係や恋に悩んでいた普通の女の子の姿も垣間見れます。また、彼女の幼少期の母との関係とか、「ちひろさん」を深く知る鍵があちこちに散らばってるので、「ちひろ」と「ちひろさん」あわせて読めば何倍も楽しめるはずです。

あー、ようやく大好きな「ちひろ」の世界について書けた。

素敵な作品ですよ、ホント。