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14歳/楳図かずお(全20巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

20世紀も終わりの1990年・・・ホラー漫画の神「楳図かずお」御大による新作の連載が開始されました。いつの時代でも攻めて攻めまくる楳図先生の作品の尖がった世界感は、いつの時代でも進化していました。
ですが・・・本作を最後に新しい楳図ワールドは開かれてないのです。今よめる最新の楳図作品である本作のあらすじですが、wikipediaでは次のように書かれています。

22世紀、人類は見せかけの繁栄の陰で、迫り来る破滅の危機に直面していた。そんな中突如として鶏肉製造工場から鳥の頭をもつ異形の人物であるチキン・ジージが生まれる。チキン・ジョージはあらゆる学問を学び、その年生まれた子供が14歳になった段階で人類と地球が滅ぶという事を知る。そこで人類による地球の滅亡から逃れる為、動物たちを連れて地球脱出ロケット「チラノサウルス号」を建設する・・・

絵柄が苦手という人も少なくないようですが、楳図作品は誰でも受け入れられる作品ではないかもしれません。
一見、珍妙不条理で大迫力、トンチンカンで荒唐無稽・・・ハチャメチャな設定ですが、単なるトンデモな作品ではないのです。本作で描かれる未来の人類の傲慢さや醜悪さは、今の私たちとまったく関係のないものでしょうか。

普通の人であれば、人類の醜悪さも見たくないでしょう。フィクションであればどこかに希望があってほしいと願うものでしょう。でも、先生の描く極限の世界では圧倒的な絶望が紙面を占めているのです。

だからこそ、楳図作品は他では味わえない世界があるのです。この話の行きつく先・・・是非ご自身の目で確認してほしいと思います。

私的感想

この作品にであったのは、受検を終えた頃。頭が鳥の鳥人間が人類の未来を語ってる本作に大きな衝撃を受けたものです。・・・まだ、笑い飯の鉄板ネタが世を騒がせる前に、鳥人間はそこにいたのです。

と、冗談はさておき・・・

楳図かずおを神とあがめる読者は多数いるのは周知のとおり。自分も多分に漏れず・・・ 小学3年生の時に漂流教室を読んで眠れなくなった自分は、いつになっても楳図ワールドのパワーが変わらないどころか、どんどん増していることに衝撃をおぼえました。

確かに、先に書いたように先生の作品は本当にハチャメチャな世界なのです。主人公は培養された鶏肉だし、それが高度な知恵を身に着けてしまうし、不死のテクノロジーを編み出してしまったり、未来の地球がどうなるかを正確に導いてしまったり・・・

挙句、宇宙人は出てくるわ、地球のパワーが奪われて地球が狂うわ・・・とグチャグチャに見えます。

ただ、それは先生の思想の上にきちんと築かれたものなのですが・・・それを感じられるのは、本作を読むしかないのです(ネタバレの方で言葉にしてみましたが・・・そんなの読むんだったら本作を読むべきなのです!)

若干のネタバレ

 楳図先生は、描きます。

人類の未来を。

このまま技術が発達しても、自然や世界は、人の手に負えるものでは無いと。

世界は生き物のように寿命があり、人類はその世界を死にむかわせる病原菌のようなものだと。我々は自分たちの世界を壊す事ができても、助けるために・・・たとえば、弱った虫を居心地のよい葉の上に動かす事さえ出来ない。地を這う虫が、鳥の視界を得る事ができないように。

しかしながら、より上位のレイヤーかはたまた異なる次元の気まぐれで、助けてもらう事はできるかもしれない・・・。チキンジョージという異形の存在は、その鍵となりうる存在であったりします。

でも、世界を知った気になった人類という種は世界の真実を手に入れることも、生き残ることもできないという。本作で描かれるのは、圧倒的な絶望。

今までの人類には、未来すら与えられません。

それでも、一縷の希望が描かれます。それは、穢れる前の若い子供たちが(本書では14歳になる前の子)が努力に努力を重ねた先で、神がきまぐれを起こしてくれれば、真実に辿りつける可能性がうまれる、と。

あの日、地球の未来に流された少年たちが希望の無い未来で行き先(生きる先)を見つけたように、この世界でも子供たちがこの傷ついた世界の果てで、何かを見つけてくれるかもしれないのです。

おどろおどろしい絵と、一見支離滅裂にみえる設定で分かりにくいかもしれませんが、楳図先生の描く世界の深さは他に無い・・・唯一無二のものです。

誰にでも勧められるものではないかもしれませんが、出会えて良かったと思える作品の1つです。