完結漫画ブログ

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ごっこ/小路啓之 全3巻

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この漫画のオススメポイント

小さい頃から、誰でもいろんな「ごっこ」遊びをしてきたかと思います。ただ、本作の「ごっこ」を経験してる人は少ないかも。それは、「親子」ごっこ。それも未婚の三十路男(職業:ニート)と幼女という犯罪的な組み合わせ。いやらしい関係だと想像しちゃった方、その先入観ちょっと待って!その「親子」ごっこは、とっても温かく、不思議なものだったのです・・・

どんな時にオススメ

漫画喫茶に1~2時間ぐらいでキリのよい漫画を読みたい人。癒しが欲しい人。社会の不条理を嫌う人。子育てに疲れた人

私的感想

このブログを書くために改めて、本作を読み直してみました。たった3巻の中に、主人公の誘拐した幼女ヨヨ子への真っ当な愛情がこれでもかと詰め込まれていて、とても好感がもてる作品でした。ひょっとすると、血縁のある親子よりもちゃんと親子しているかもしれない。個性的なキャラクター陣と、ヨヨ子の子供らしい振る舞いも計算高さも、とにかく愛しいと思えるリアルな要素が山ほど詰まっています。

とはいえ、そもそも設定が無職ロリコン三十路男の誘拐犯が主人公。そのバランスの悪さがうまくまとまっているのが、作者の上手いところ。独特の絵柄も全体にながれる浮遊感も、うまくこの難しいモチーフを料理している感じがします。

3巻と限られた冊数ゆえ、若干の駆け足感はありますが、この冊数でいろいろな気持ちに触れることのできる隠れた名作ではないでしょうか。

心に残った台詞

主人公がヨヨ子を通じて社会とかかわり合っていく中で、幼馴染の婦人警官にに罵られた時

そっか…ヨヨ子を教育しているつもりが自分を教育していたのか…

子供がそばにいるというのは、自分が大人になれるチャンスをくれる…そういうものなのかもしれない(1巻62p)

 その他

作者の小路先生がなくなったのが、2016年の夏のこと(サイクリング中の心筋梗塞)。このブログを作って、最初にどの作品を書こうかと思った時に、まず小路先生の作品を書こう!と思ったのです。犯罪王ポポネポとか、他にもいろいろ作品はありますが、個人的にツボだった本作を選びました。

千原ジュニア主演での実写アニメ化もほぼ撮影が終わっていたようですが、助演女優の方のドタバタで無期限延期となっています。

以下、集英社の漫画サイト(S MANGA)から本作の1話目が読めます(要FLASH

www.s-manga.net

若干の…ネタバレ

 はた目には、娘を溺愛する父親と子供の父子家庭。だけど、その実態は…?

社会にうまく馴染めなかった・・・どこにでもいるダメ男。窓からみえる家のベランダでいつも傷だらけになっていた少女を連れ去り欲望に身を任せようとした時に、男は気づいた。ヤッてどうする?ヤッたあとにどうなる?

それよりも、この子とずーっと一生いたい。おじいになっても一緒にいたい…

と、一生途絶えることのない関係を・・・と望んだ、そういう関係。それは彼女のパパになること。

世の中、親子関係ぐらいしか100パーセントのチカラでぶつかり合えない。恋人だって、同僚だって、相手を気遣ったり・・・とにかく全力感がない。それは仕方ないことと、割り切れるならいい。でも、世の中には、割り切れない人もいる。そういう人の姿は、普通と違うから悪なのだろうか。正義ってなんだろう。それに目をつむったら誰かが不幸になるんだろうか。人を不幸にさせる正義なんてあっていいのだろうか?

世の中からは爪弾きにされている引きこもりニートの三十路男(ついでにチリチリ)は正しくはないやり方かもしれないけど、幼女を大事にし、幼女もその保護を求めた。その行きつく先・・・是非、ご自身の目で読んでいただきたいなぁ、と思います。