完結漫画ブログ

完結漫画に特化したブログです。マンガ喫茶のお供にお役立てください

星空のカラス/モリエサトシ(全8巻)

f:id:totaraka:20180612131648j:plain

この漫画の概要・オススメポイント

主人公の女子中学生 烏丸和歌 が、「相手に最も響く一手」を追求し、囲碁棋士を目指す話。

囲碁漫画といえば「ヒカルの碁」が有名ですが、こちらは少女漫画に連載されていた事もあり恋愛要素が強いです。それでも囲碁を介しての登場人物の細やかな心情が丁寧に描画されているので、ヒカルの碁とは違った楽しさがあります。

和歌が囲碁にかける想い、そして憧れの人との関係・・・二兎追いな感じはありますが(そこを減点ポイントに挙げる人も少なくないみたいですが)、和歌の真摯で鬼気迫る姿勢は読み手に何かしらの傷痕を残してくれると思います。

どんな時に読みたい?

漫画喫茶で半日程度の時間がある時。強い信念を揺らぎない意思を感じていたい時。普通の恋愛漫画でない力強い想いを感じたい時。

私的感想

とにかく熱い作品です。まだ憧れも恋も分からないようなヒロインですが、囲碁への強い想いは他の強敵にも引けを取らない。憧れの師匠(鷺坂 総司)と繋がっていたい気持ちを、碁石にのせて力強く成長していく和歌。

その世界には、碁しか無いといろんなものを削ぎ落しギリギリの生き方をする人ばかりが登場します。喜びも悲しみも盤上にしかない、それを失くしてなんて生きていけない・・・碁に狂わされた人ばかり。 そんななかでも、ヒロインは少女漫画な純粋な感じで盤上にうつる相手の感情・人柄・思いを見つけていきます。

碁でしか相手と繋がれない・・・そんな人たちに自分の正しさを示すにはただ勝つしかない。囲碁に救われ、囲碁に勇気をもらい・・・でも、そんな大好きな囲碁が、プロになるためには、楽しんで碁を打つことが許されなくなる。

そんななかでヒロインがもがき苦しみ、その先に気づいた自由を貫いた先にある掛け替えのない未来は、読んで損はないはず。ラストで彼女が歩き続けてきた道が繋いだ答えは、読んだ人を温かな気持ちで包んでくれることでしょう。

若干のネタバレ

ヒロインが中学生ということもあり、恋と呼ぶには未熟な、師匠への一方的なあこがれが描かれながら、和歌は少しずつ成長していきます。
まぁ、この師匠もなかなか個性的で素直になれない人なので、和歌の強い気持ちもなかなか届かず、簡単に話は進みません。師匠を含め、登場人物がみんな個性がつよく碁でしか自分を表現できないといった歪みをもっていますが、1つ1つの試合のなかで一人一人の個性が浮き彫りになっていきます。みんな悩んで、だけどストイックに自分の信念を貫く情熱的な展開にドキドキさせられっぱなしでした。

師匠に憧れ、師匠のところまでたどり着こうとプロを目指す和歌。他のプロ志望のライバルとの闘いの中で、憧れの師匠は、同じ名人を祖父にもつということが分かる・・・という、ちょっと昼ドラみたいなドロドロが最後に待ってます。それに動じる和歌を支えたのは、彼女の中に強く刻まれた想い。孤独な盤上でも強い意思で石を繋ぎ続けていく彼女は、碁を通じて人とつながる事ができることを示していきます。

力強く彼女の意思に打たれることができる本作。

碁を知らなくても、一読の価値のある本だと思います。