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百万畳ラビリンス/たかみち (全2巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

ゲーム三昧の礼香のゲームの楽しみ方は仕様の穴を探す…というバグ探し。ルームメイトの庸子とデバッガーのアルバイトをして過ごしていたのだけど、なぜかツギハギだらけで不思議な建物に迷い込むことに。

細長い廊下、低い天井、ループする階段、窓の外にある浴槽…人を見かけたと思ったら、自分の後ろ姿とか…もうね、マンガだからできる世界観を最高に満喫できる作品。

子供の頃、世界は果てしなかった。大人になるにつれ、世界の先の知識が頭に入り、人間関係やいろいろな要素が居心地を悪くする。ちょっとゲーム脳かもしれませんが・・・現実の窮屈さに辟易した時や、この世界から抜け出したい!もっと自由な居場所を夢想したことのあるすべての人にオススメしたい作品です。

私的感想

前半は、不思議な世界を堪能する感じ。この辺りの畳をめくって、違う部屋にでて…最高すぎるだろコレって感じで。

外部と連絡取らなきゃと、話してたら都合よくケータイが置いてある・・・だって、ゲームの世界だからね。こうやって都合よくできてるのも潔い(できる、見事に圏外)。
不思議な建物をさまようだけじゃなく、きちんと脱出方法を検討する礼香と庸子。水道や電気が生きてるならケータイより固定電話の方が可能性あるんじゃない?とりあえず電線を辿って進もうとか・・・そんな感じで、ね、読んでる方も一緒にワクワク出来る感じ

後半は、この不思議な世界の位置が分かって、ちょっとシリアスな展開。不思議な世界も一筋縄でいかないけど、自分たちの住む世界が窮屈で、不思議な世界の方が性にあってる礼香は、不思議な世界に残ることを決断するが・・・はたして、その結果は?!

と、いった感じで、前半のぶっとんだ世界に一つ一つ意味を持たせようと説明が多くなり、若干、テンポが乱れてきます。また、ヒロインの背景も徐々に見えてきて、単なる変な子じゃないというのが分かってくるのですが・・・その分、読みどころのポイントが分散されてしまいます。

実社会に馴染めないヒロインの気持ちの揺れはしっかり考えさせられる部分ですが、後半の盛り込みすぎな部分がゴチャゴチャしてしまってるというか・・・

それでも、ちゃんと終結させるという作者の意図がしっかりとあるので、その辺りは、きちんと納得できました。オチの批判はいろいろあるようですが、個人的には、ヒロインの闇をさらっと描きつつも、バッドエンドでもありハッピーエンドでもあり、という話のもって行き方は個人的には好ましかったです。

上下巻なので、1時間程度。漫画喫茶でちょっとした時間で読むには贅沢な作品だと思います。

若干のネタバレ

少年画報社は少年漫画出版社御三家とはまた違った感じのアプローチが多く、個人的にはたまらない作品が多いのですが、本作もあいかわらずいいツボをついてきています(高橋葉介先生とか高港基資先生とか・・・少年画報社様ありがとうございます!て感じで・・・)

さて、本作。

朝、目覚めた時、「なんか変な不思議な夢をみたなぁ・・・」って布団のなかでゴロゴロと余韻に浸ってるような・・・そんな感じの描写が個人的にツボでした。ゲームのようなヘンテコな世界を模索しながら元の世界への戻り方を考える二人。でも、ヒロインの方は元の世界に戻りたくなく、むしろ
「現実にもバグがあるなんて、面白くもない世界に希望が持てるじゃない!」
と、変な世界の方に惹かれていきます。一方の、友達の方は、元の世界に大事なものがあって・・・

逆にいうと、ヒロインにとって元の世界に大事なものがないってのが寂しくもあり。いわゆる社会不適合者と名前をつけることもできるのだけど、彼女が現実社会に未練が無いのは全てが全て彼女のせいでもなく・・・。

これを、読む人によっては『ヒロインが現実逃避をしてる』と、読めるかもしれない。ただ、社会不適合にならざるを得なかった彼女が自分を出せる場を見つけられたことを・・・それでも現実を捨てきらなかった事をハッピーエンドとして受け取りたいなぁと思います。

一風変わった本作ですが、2巻(上下巻)完結ですので、気軽に手にできる作品ですが、なかなか深い味わいのある作品です。やっぱり・・・非現実は漫画の醍醐味です!