完結漫画ブログ

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1/11じゅういちぶんのいち / 中村 尚儁

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この漫画のオススメポイント

チャンピオンズリーグ(CL)優勝を目指す主人公安藤ソラを中心に、複数の人間の視点で描かれるヒューマンドラマ。

どんな時にオススメ

漫画喫茶で半日程度の漫画を読み切りたい時。一生懸命に何かに打ち込んでいる人の姿に感動したい時。とにかく泣きたい時

私的感想

季刊誌連載のためだと思うが、毎回、話の中心人物が変わるオムニバス形式の進め方だったので、個人的にはそのスタイルが落ち着かず最初はストーリーに入りにくかった(オムニバス形式なので極端にいえばどの話から読んでも成立する)。そのうち(3巻目あたりから)、いろんな人の目を通した主人公安藤ソラの姿が浮き彫りになってきて、徐々にひきつけられていた。

安藤ソラは、「チャンピオンズリーグで優勝し、世界で最強のチームの1/11になる」というありえない夢を公言している。誰だってそんな夢を聞いたら呆れる。そんなのサッカー後進国の日本人が届く世界じゃないって。

安藤のまわりの人間も同じだった。でも、次第に彼の熱意に惹きつけられていく。それは、諦めずに必死に努力してる姿を通じて、彼の決意の強さを感じるから。でも、彼の決意の強さの理由は、誰にも話せない神聖なものだった。その神聖な理由の扱い方がとても丁寧で、安藤ソラという個性の大きな要素となっているのだけど、それはネタバレの方で触れたい。

安藤も最初は普通のリアリストだった。自分のサッカーセンスの限界を知り、進学校に行っていい大学に行って安定した就職を考えているような、冷めた学生だった。ところが、ある人との出会いで、サッカーに戻ってくる。そして、どんなチームにいっても、いつでもチームの一人の11分の1として周りと生きるサッカーを体現することになる。安藤のサッカー人生は、本当に夢の舞台に辿りつけるのでしょうか?

 

ちなみに 映画化の予告編が下記で見れます。大体の雰囲気は分かるかもしれないけど、主人公のイメージはちょっと違うかなぁ。

www.youtube.com

以下、公式サイトで試し読みができます。

www.s-manga.net

 

 

若干の…ネタバレ

サッカーをあまりしないサッカー漫画です。他のサッカー漫画は何十話もかけて1試合を消化するってのに、サッカーシーンすら描かれないサッカー漫画は、珍しいんじゃないかと。その分、サッカー以外の場所での人物の心理描写が多いです。

子供の頃から天才型のドリブラーだった主人公安藤ソラも、成長するにつれ多分に漏れず壁にぶつかる。自分はサッカーの神に選ばれなかった・・・とサッカーから遠ざかる。サッカーに限らずだけど、成功する人は一握り。今まで一生懸命やってきたものを諦める・・・その決断をした後のソラは何かが抜けた状態だった。

そんな中、日本女子代表の若宮四季と出会う。彼女みたいにサッカーの神様に選ばれた人間とは違う!と反発するソラ。しかし、彼女との出会いで、今まで自分の力を信じてドリブル一辺倒だったソラは、仲間にボールを託すことの大切さを痛感する。

楽しそうにボールを蹴るソラの姿をみてホッとしたように四季は姿を消す。

サッカーを取り戻したソラが、家で何気なくテレビをみていると、四季が乗ったアメリカ行きの飛行機が墜落していた事をしる。そして、母親から、四季は子供時代の幼馴染のツヨシ(津吉)であることを聞く。ソラは、ツヨシのことを男だと思っていた。俺よりヘタなツヨシが・・・と、愕然とするソラ。

そして、ソラは、ツヨシの出来なかった夢を叶えようと強い決意をもってサッカーに取り組んでいく。その姿を笑う人もいた。でも、強い思いが回りの人を巻き込んで、ソラは1つ1つ階段を上っていくことになる。

成功するのは、たった一握りの人かもしれない。それでも、大事なのは人とのかかわり。たった一握りの人間になれなくても、きちんと相手と向き合って、自分のやるべきことを続けていければ、自分の居場所ができるはず。全員、ボールをもってサーカーやることなんてできません。ボールは1つでも、11人いないとチームは成り立たないのですから。