ケンガイ/大瑛ユキオ(全3巻)
この漫画の概要・オススメポイント
これまた、ほろ苦い青春漫画。
伊賀くんがバイトしているレンタルビデオ屋の先輩・白川さんは、バイト仲間からちょっと浮いた存在。伊賀君は、そんな彼女が気になって仕方が無く、何かにつけ彼女に接近を試みるも一筋縄でいかず。
普通って何?自分が大事にしてる価値観を共有できなくても別に構わないんじゃない? 人と違うことは、怖い事でも誇る事でもない。ただ、自分が好きに生きてるだけ。ちょっと寂しくもあり、不思議な、一味違う恋愛漫画を是非
私的感想
こんな作品を面白がってるような輩は、ちょっと微妙だと思うけど、それでも惹かれてしまう。
個性個性っていうけど、周りに合わせないと浮いてしまう。本当に個性を大事にしてる人は、それが目的ではなく、ただ自分が好きなことをしてる。たとえ、それで、周囲とギクシャクしても気にしない。
DVDをみて
「露出行為とバッグ盗むのどっちが目的なんだよー」
「ステーキ肉、股に挟んで盗むとこいいよねー」
と、盛り上がれる不思議な彼女。
バイト仲間からも、『圏外』というレッテルを貼られ、あっちの世界とこっちは別、という空気がバイト先に充満している。 化粧もせず髪もバサバサ。自分のお金はすべて映画に費やせるという彼女。貞操観念もあるのかないのか。でも、いわゆる「不思議ちゃん」とも違う。
普通の恋愛しか分からない主人公は常に空回り。
・・・でも、「普通」って? この漫画は1つの答えになると思います。内容はサブカルっぽいけど、見やすい絵柄のおかげでサブカル嫌いな方でもいけるのではないかと。
3巻と短いのが残念な気もしますが、その分、濃い!
これは、なかなか他には見ないタイプの作品だと思います。オススメ!
若干のネタバレ
「映画みる以外、生きてる理由
ないしね。他は全部、どーでもいいんだよねー」と、いう白川さんの生き方は、なかなかできるもんじゃない。
趣味、毎日の生活、仲良しゴッコ、将来設計、何かあった時の保険、時にはバカ騒ぎ・・・生きる上で、やらなきゃいけないと思う事はいくらでもある。白川さんはそれが無い。自分が欲するもの以外はそぎ落とす。恋愛に、他人に期待していないから、一人の道を歩ける。
それは、ヘタに同情なんかしちゃいけない。本人はそれでいいのだから。
「あたしは悪意を信じる。悪意に嘘はないからね。好意って嘘っぽくてなんだかわかんないや」
と、いう白川さんに肩入れできない人もいるかもしれない。ただ、自分の場合は、若い頃、常にこんなことを考えてた。今おもうと寂しい感じもしなくもないけど、当時の自分はそれでよかった。
白川さんと伊賀君の関係は、華やかなドラマにはならない。ラストで、白川さんが不治の病になることもなければ、海外留学の話もでてこない。淡々と二人の関係性が描かれる。
たまに、メジャーじゃなくてもこういう作品に出会えると、漫画の奥の広さを痛感するのですよ。一般ウケはしないかもしれないけど、オススメしたい作品の1つです。