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日本沈没/一色登希彦・小松左京(全15巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

日本SF界の名作、小松左京先生の『日本沈没』をコミカライズという難題に挑戦した名作。原作のヒリヒリするような日本の終末をきちんと描き切っている。
きちんと、日本を沈没させなかった映画版に比べて圧倒的に見るところの多い作品であると思います。

私的感想

どうしても、原作との比較をされてしまう本作ですが(そのあたりは『若干のネタバレ』で書いてみたいと思います)、まずは、「もし、日本に大きな地震が起きたら・・・」という視点でみてほしいと思います。

数年おきにあちこちで大きな地震は起きていますが、日本列島が沈むような地震は、さすがにSFの中の世界のお話だとわかっていても、絵の迫力に押されて「ひょっとしたら、そういうことがあるかもしれない・・・」と、思わされてしまうかもしれません。登場人物の、絶望した表情には本当にゾクリとさせられます。

 ちゃんとした日本人になるために・・・極端ながらも、強い意思と緊張感で描かれた本作、一度よんでおいた方がいいと思える一作だと思います。 

若干のネタバレ

現代版アレンジもあるため、原作ファンにはちょっと悩ましい感じがするかもしれませんが、今よむなら、映画よりも何よりも本作だと思います。意固地に原作至上な方であったとしても、作品をきちんと咀嚼してホンキで向き合ってる一色先生の熱意は感じていただけるはず。

確かに、首相の壊れっぷりや、他国の無慈悲な対応は極端かもしれないですが、漫画という媒体であるからには、ディフォルメはつきもの。むしろ、原作をきちんとリスペクトしつつも、原作とはまた違った日本沈没に出会えたことが個人的にはすごくうれしい(ラストのあの方の登場とかね)。

政治色が強すぎるとか、作者の偏った信条を押し付けているとかいろいろ批判も多いですが、このままの日本だと先が無い・・・平和ボケした日本人の心に、必死で訴えようとする本作の力強さを何より感じてほしいと思います。

また、映画版では触れられなかった「核兵器」を露骨に出してきたのは立派。映画だとN2爆弾だっけか。なんか、そんな名前でごにょごにょされちゃったけど、漫画はそんなことは無く、きちんと「核」がでてきたので、そのあたりも好印象だったりします。

最後のドタバタや、とんでもSFや強い主義主張も含め、人間の良心や理想と、エゴや人間のドロドロした欲望と罪深さを、未曾有の災害の前で民族がどう向かっていくのか・・・こんなに強い熱量を感じさせる作品はそうそう出会えるものではないと思います。出会ってよかったと思える一作です。