完結漫画ブログ

完結漫画に特化したブログです。マンガ喫茶のお供にお役立てください

オハナホロホロ/鳥野しの(全6巻)

f:id:totaraka:20180626115302j:plain

 この漫画の概要・オススメポイント

同棲していたみちるが突然失踪して5年、彼女は一人の男の子を連れ「母親」となって戻ってきた。翻訳家の麻耶とシングルマザーのみちる、新たにみちるの息子・ゆうたを交えての「同居」生活が始まる(wikipediaより)

と、女性同士の同棲・・・セクシャルマイノリティの話なのですが、あまりそこは前面に出てこず、人と人との繋がりを優しさと残酷さの両面を丁寧に書き上げた作品です。緩い感じの同性愛の描画なので、そういうのが苦手な人でも大丈夫!(・・・だと思う)。
はちみつとクローバーでおなじみの羽海野チカ先生のチーフアシスタントだった方のデビュー作品ですので、絵の優しい雰囲気はどこか見覚えがあるかもしれません。

気になった一言

あたしには「他人に左右されない」とかどうでもよくて・・・むしろ左右されたい!誰かあたしを左右して!!

「こっちが正しい道だよ」って誰かが呼んでくれたら、まちがったってついて行くのに(中略)あたしに決めさせないで。もう有無をいわさず、連れて行ってくれても・・・なーんて・・・

私的感想

FEEL YOUNG連載ということで、ちょっと大人向けの作品です。とはいえ、若い子でも、セクシャルマイノリティに変な偏見をもたずに読めると思います。

セクシャルマイノリティを扱う作品は、どうしても過激になるか腫れ物に触るような背徳感というか独特の雰囲気があるのが多い気がするのですが(その背徳感が不思議な刺激になったりするのですが)、本作は「あ、そういえば女性同士が好き合ってるんだぁ」と、そのことを忘れて読めてたりします。
というのも、子供の姿が間に入っているので、育児に奮闘する女性二人という図になっているからかもしれません。

女性同士の恋愛というより、お互いの依存関係や、人として信頼しあうってどういうこと?っていうところに注力されているような気がします。一人で生きるのは凄く難しいし、ましてや小さな子がいればなおの事。
でも、人と人との距離感って凄く難しくて・・・相手を思いやって距離を置くことが逆に相手を傷つけてしまったり、と。自分の幸せと、大事な人の幸せが重ならないかもしれないという恐怖に直面すると、身動きとれなくなっちゃったり・・・。
そういう強さと脆さ、・・・その辺りの機微が描きすぎな感じがする時が多少あったかな・・・。もっと読者側に任せてしまった方が作品が楽になるかもしれない(それが良いかは別の話かもしれないけど)

セクシャルマイノリティの人が多く出てくる以外は、けっこう普遍的なテーマ。ただ、子供のユウタのある意味ブサ可愛いというか、不思議な生き物な感じが可愛いくて仕方ないです。こまかな所作や、子供ならではの反応がきゅんきゅんする。一番の推しポイントはそこかもしれないです。逆にいうと、子供に目が行き過ぎて他がないがしろになることも・・・(笑)。

にしても、どんなに真摯に生きていても、人と人の間って難しいなぁ・・・

若干のネタバレ

二組の同性愛を軸に描かれた本作

1つめの軸は、いつの間にかいなくなった同性の恋人が子供をつれて来たら・・・みちるが麻耶から離れて、結局また麻耶のことを頼ることになった時の歪みは簡単には片付かない・・・日々、楽しく過ごしてる分には表に出てこないけど、二人にささる棘

もう1つの軸は、ユウタの父であった人(つまりミチルの相手)と、その恋人。麻耶たちと同じマンションに住む彼はユウタに、亡くなった恋人の面影を重ね・・・

男同士、女同士の2つの恋愛が大きな軸になっていて、その中心に子供のユウタがいる・・・という、これで大人になったらこの子どうなるの?みたいな図式(漫画だから、ちゃんといい子に育ってます!)

人と人の関係には、常に「不安」が付いてまわるものです。同性同士のつながりならそれは、男女の関係よりも深いのかもしれない。怯えながら、それでもぶつかり合う人たちは、性差をこえて共感できるものがあると思います。

同性愛を描いた作品は、個人的には、中山可穂さんの作品が好きだったりするんだけど、それに比べると、女性同士の激しいぶつかり合いは少ないので、ちょっと物足りなくもあるかもしれない。でも、男と女も人それぞれなように、同性の恋愛も人それぞれなんだろうなぁ

本作とは話が逸れますが・・・これからの世の中は、「父親はこうあるべきだ」とか「母親の役割は…」とか、恋人とか親子とか性別とか、そんなのがどんどんボーダレスになっていくのでしょうね。どういう関係性であったとしても、その当事者は幸せであればいいと思う(そしてできれば、周囲に対して少しでも優しくあれればいいと思う)。でも、そういう難しい世の中になることが幸せなのかは、また別な感じがします。

自分が古い考えなのかもしれないけど・・・考える事が増えれば増えるほど、ついてこれなくなる層は絶対にいる。選択肢が多いことが、これから家庭を作る人たちにとって幸せなものでありますように・・・