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お前は俺を殺す気か/シブサワカヤ(全5巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

物語は、個人デザイナー事務所を営む男のところに採用された美人女性は双子だった、という絶妙の人間関係からスタートする本作。社交性のある方が姉の雪江、引きこもりの妹が天音・・・父親のいない姉妹はお互いがいるのが当たり前の育ち方をしてきており、妹は姉がいないと夜も眠れず・・・。

そんな双子と成り行きで肉体関係をもってしまった芝は、双子の才能を認めているからこそ手放すこともできず・・・だからといって両手に花を喜べるような状態ではなく、まぁ、見事にドロドロにこじらせていく。

ベッドシーンも必要以上に多い気がしますが、作者が女性ということもありイヤらしさよりも女性の脆さや強さがきちんと描写されて、1コマ1コマに絶妙な雰囲気が溢れています。

シブサワカヤ先生の、ちょっとサブカルな不思議な世界観に是非ふれてみてください。

どんな時に読みたい?

半日程度、漫画喫茶でじっくり漫画を読みたい人。大人の恋愛のドロドロ感を楽しみたい人。ちょっとエッチだけど、きちんとした物語を読みたい人。

私的感想

ヤングアニマル花とゆめでおなじみの白泉社集英社講談社小学館の週刊漫画雑誌御三家に比べると、ちょっとなじみがないかもしれませんが、古くは「パタリロ」であったり「ガラスの仮面」であったり、最近では「三月のライオン」や「デトロイトメタルシティ」、「ベルセルク」と優良な漫画を出版していたりします

本作は、そんな白泉社の季刊誌(年3回発刊)の「楽園」に連載されていました。「楽園」は白泉社の区分的には「男性向け漫画雑誌」になってるようですが、タッチの柔らかい先生方が多く、濡れ場ひとつとっても男性向けの激しさはほとんどなく、むしろ女性誌向けといってもよい内容が多いです(本屋で探すときに置き場所が見つけにくいんですよね・・・)。
書かれている先生方も、「げんしけん」の木尾士目(以下、敬称略)、「うさぎドロップス」の宇仁田ゆみ二宮ひかる、といった渋め(失敬!)な作家さんが多くじっくり読ませる作品が多いのですが、その中でもシブサワカヤ先生の作品は存在感を見せつける作品だと思っています。

楽園には、他にも今後くるだろうなーって作家さんも少なくなく、犬上すくね水谷フーカ日坂水柯中村明日美子黒咲練導・・・と、気になってる作家陣が揃っていたりします。太田出版の「マンガ・エロティクス・エフ」が休刊した後の、個人的な楽しみだったりします。

・・・と、「楽園」の説明になってしまいましたが、本作は「楽園」を代表する作品の1つと言って過言ではないと思います。同じ顔をもつ二人の美人に挟まれる芝は、二人に振り回される中で自分が何を大事にしたいのかを問われ続けます。同じ顔でも別の個性、別の人間を大事にしようとすることに、そもそも無理があるのですが、芝は悩みながらも、二人に向き合い続けます。

そんな感じで、現実的にはなかなか出会えないような色恋沙汰ではありますが、シブサワカヤ先生の世界観に是非、ふれてみていただければ、と思います。

「楽園」試し読み
「お前は俺を殺す気か」試し読み(白泉社)

若干のネタバレ

とにかく「痛い」です。

20代の頃であれば勢いで乗り切れるのでしょうが、それを過ぎると恋愛での依存して一瞬は楽になれたとしても、それは麻薬みたいなもので手に負えないのが分かってくるので、そういう感情から距離をおいたりします(仕事や家庭が忙しくてそれどころじゃなくなるってのもありますが)。ですが、漫画であれば、現実的な痛みを覚えずに麻薬じみた恋愛のドロドロを読めるので贅沢な非現実感を味わえるわけで・・・

本作「お前は俺を殺す気か」で、実際、美人姉妹が主人公の芝を殺すわけではないですが、それぞれがお互いにべったりと依存し合ってる二人の美人女性に翻弄された芝は、「お前は俺を殺す気か」と何度も言いたくなった事かと思います。それでも、双子がいとおしい。最初は、二人の才能を、そして、その中身を大事にしたいと思っていた芝が、人と向き合う中で、どんどん関係性をこじらせていく・・・ドロドロです(笑)。普通は、相手に向き合っていけば分かりあえていくはずなんですけどね・・・双子に同じように向き合っていくのは一筋縄ではいかないようです。

最終的に、それぞれお互いの進む先がみつかった姉妹はきちんと自分の足で立つことができるようになりました。ですが、散々ふりまわされた芝は、同じ遺伝子で異なる才能・個性をもつ二人の女性を選ぶことができず・・・

自分が芝の立場であれば、「お前は俺を殺す気か」と何度も思いながらも、この結論にたどり着けたことに安堵するでしょうね。この結論にたどり着けるのであれば、精神を削るようなドロドロなやり取りも報われるのかなぁ。

都合のいい結論、と思う人もいるかもしれませんが、それは、まぁ漫画ですので、割り切って楽しんだもの勝ちな気がします。