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おやすみプンプン/浅野いにお(全13巻)

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この漫画のオススメポイント

絶対的な欝漫画。モラトリアムの鬱蒼とした感じがこれでもか!と小学生のぷんぷんが一目ぼれした転校生・田中愛子ちゃんの呪縛から抜け出せずに齢を重ねていく話。雰囲気ゴリ押し系漫画の傑作?!器用に生きることのできない、自己愛を拗らせた仲間たちの聖書。合わない人は「二度と読みたくない!」と嫌悪する本作。あなたにはどう響く?

・・・グッドバイブレーション?

 

どんな時にオススメ

あえて、どっぷり暗くなりたい時。落ち込んで落ち込んで、落ち込む事に飽きたい時。それっぽい雰囲気に浸りたい時。

子供の頃、あまり悩まずに幸せに生きてきた方には何のことだかさっぱり意味が分からない作品かもしれません。

心に残った台詞

愛子ちゃんと付き合ってるバドミントン部の先輩が試合している時、愛子ちゃんの手を握りながらプンプンが考えていたこと

今、愛子ちゃんの手をンッ!!グゥキュッ!!と握り返せば…約束を守れなかったことを許してくれるかもしれない。むしろ、チッスしたり、したぎの中のアレ等をチラッと見せてくれるかもしれない…!!

一人暮らしをはじめたプンプンが酔っぱらって女の人の家で目覚めて、その帰り道に考えていたこと

もしまた、生意気パンティと出会う時があるならば、誰であろうとかまわずひっぺがして肉棒をねじ込んでしまえばいいんです。そしたら、お巡りさんは僕を逮捕してくれるだろうかしら?僕を死刑にしてくれるだろうか?

十代の男の頭ン中なんてこんなことばっかり。その描写が生々しくて気持ち悪くて印象深い。

私的感想

好き嫌いが分かれる作品のようです。個人的には、自分の精神状態によって、受け入れられる時と、そうでない時が分かれます。

受け入れられる時は、普通の人間の惨めさや、持て余し感を共感できる時。こういう悩みが自分一人のものじゃないという救い。
でも、あまりにもプンプンの弱さに苛立ったり、作者の自己陶酔感が気持ち悪くなったりすることもあり・・・

ただ、その振り幅は、他の漫画では味わえないものなので、ついつい本作が気になってしまう。それは突き詰めると、同族嫌悪みたいな感じかもしれない。昔の自分の嫌な部分を見せつけられる不快感と、懐かしさ。決して、最後の最後まで手放せない感じ。

子供の頃、「自分は特別だ」って思っている子は少なくないと思う。でも、実際に大きくなるにつれ、その特別感は勘違いである事に気づいていくものだけど、それをどうしても納得できない時期がある。社会と個人の関わり方を見失って、ただただ世の中が不条理に思える時期・・・それは、青春って時期なんだろうけど、プンプンは、かなり拗らせてしまった。それでも、人と関わらずに生きてくことはできないし、時間は無情に過ぎていく。

プンプンは、いつ、どうやって拗らせた自分と決別できるのでしょうか。そして、決別できたプンプンは幸せになれるのでしょうか。

若干の…ネタバレ

小学5年生のプンプン。転校生の田中愛子ちゃんに一目惚れ。練馬からやってきた愛子ちゃんは他の子とはちょっと違う。物知りだし、将来の夢も語れて、大人っぽい彼女はすぐにクラスの人気者。一方のプンプンは、みんなの前になると恥ずかしくて将来の夢の作文を言う事もできない繊細な子。
でも、愛子ちゃんはそんなプンプンに気付いてくれた。そしてプンプンはそんな愛子ちゃんを一生まもりたいって思った。その気持ちは、とても掛け替えのないもの。だけど、それが一生プンプンにまとわりつくのです。

誰もがそんな言葉の1つや2つあったはず。でも、生真面目なプンプンはその言葉から逃れられなく、その結果、多くの人を傷つけて自分も傷つけて、それでも、その言葉を宝物のように守ろうとするのです。

もし、プンプンが、愛子ちゃんが普通の家の子だったら、もっと簡単に現実に『迎合』できたかもしれない。でも、愛子ちゃんの家は妙な新興宗教をやってる家、プンプンの家は父親のDVで家の中がボロボロ。

その後、中学生、高校生となっても基本は変わらないプンプンは、いつになっても自己愛の塊で、飢えて、孤独で・・・生きるのがヘタクソで。で、最後の最後まで、プンプンはプンプンで相変わらずの絶望ごっこ。人と関わらず生きるのは自分の逃げ道を作る以外の何ものでもなく・・・。

 

あぁ、懐かしくて懐かしくて、吐きそうだ。