完結漫画ブログ

完結漫画に特化したブログです。マンガ喫茶のお供にお役立てください

昴/曽田正人 全11巻

f:id:totaraka:20180511084710j:plain

この漫画のオススメポイント

感情にストレートなヒロイン宮本すばるが、バレエと出会った為に背負った重すぎる業とは?すべてを切り捨て、自らとの孤独な戦いに生きる様を描いた物語。
「才能が、きっと全てを肯定する」そんなヒロインの生き方にグイグイと惹きつけられるはずです

どんな時にオススメ?

漫画喫茶に半日こもって漫画に浸りたい時。圧倒的な芸術の姿を垣間見たい時。自分の知らない世界を広げたい時

気になった台詞

ヒロインに踊りを教えてくれたキャバレーの経営者のオバサンが若い頃パリオペラ座を受けた時の話

アタシが落とされた理由はねー

”祖母が太っていること”
”骨格と祖母の体形により、イスズ・ヒビノは30代以降90%以上の確率で肥満体形になるー”

”祖母”だよ?

なんのこたぁない。アタシは二世代前、オバアチャンが生まれた瞬間に、オペラ座には入れないことが決まっていたんだよ。

凄まじい世界だろう?こんな世界 他にない

芸術に仕えるというのは、きっと、こういうことなんだね。もはや神の視点から選別と淘汰がなされる。あんたが足を踏み入れかけているのは、そういう世界なんだよ。さぁ、覚悟は、いいかい?

このあとのヒロインの受け答えも超カッコいいのですが・・・それは実際に本作を読んでほしいな、と思います。

私的感想

曽田先生の作品は「め組の大悟(消防士)」や「Capeta(レーシング漫画)」と名作が多いのですが、まずは「昴」を。曽田先生の作品では、何かの天賦の才がある主人公が、ストイックに何かに打ち込む図が多いのですが、本作のすばるちゃんもまさしくその一人。しかも、さわやかさが微塵も感じられないのがリアルでいい。

小学生だったすばるちゃんが、子供の頃のある事件がトラウマとなりバレエを手放せなくなり、そのままバレエとともに成長し大人になっていくというお話。それだけ聞けば、「その成長の間に、挫折や苦悩もあって、でも舞台も広がっていくんでしょ?」と、そこまでは、本作を読まなくても設定を聞けば想像に難くないでしょう。でも、そのままバレエに向き合って困難を乗り越えて突き詰めていったときに、どういう答えがみえてくるのか気になりません?

普通に生きてる多くの人にとっては、藝術やスポーツ・・・何かにストイックに向き合っている姿は、どうしても自分とは重ならない。だけど、胸に響く。正直、小学生とか中学生とかもっと幼い時に知っておきたかったお話しだと思います(その時に、理解できるとは思えないけど、心に何かしらの爪痕を残したのは疑いようが無いので)

そのうち、本作のコマを見てるだけで、そのバレエの曲が聞こえるようになってくるかもしれませんよ。

ちなみに、本作の映画化は、日本を含むアジア4か国の共同で行われたようですが、ヒロインを表現できるキャスティングはとても難航したようですが、最終的には黒木メイサさんがすばる役を演じたようです。

本作は続編の「Moon(全9巻)」があり、本作の完全な続編になっています。

 その他

 脳腫瘍で絶対安静な弟のために、ひたすら我慢を強いられた小さなヒロインすばるが、友達に勧められて体験したバレエ。大好きな弟のために、「今日あったこと」を全身をつかって踊りで伝えていた彼女。踊る事は息をするぐらい自然な事だった彼女が、ちゃんとしたバレエに出会い、初めて他人から褒められ、心から「やってみたい!」と我をだした。

弟の病室で母にその話を告げたが「和馬(弟)はもうやりたいことも出来ないのよッ」という母親と衝突する。「そんなのわたしのせいじゃない。かずまなんかいなきゃいいいんだッ」と言って、彼女はハッとした。そして、弟の容体が悪化し、帰らぬ人となってしまう。自分が言ってはいけない一言を口にしてしまったせいで弟が・・・と、彼女のトラウマとなってしまう。トラウマなんて言葉で片づけられない、彼女の傷は、以後、彼女の踊りだけでなく彼女の存在の根源となって描かれていきます。

弟の命の上に形成されている彼女の踊りは暴力的であり、絶対的。年齢がおいつかないそのアンバランスな才能が数々のドラマを作りあげていく・・・

ただ、自分が好きなバレエを・・・自分の場所を本当の自分でいられるところに辿りつくために