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とめはねっ! 鈴里高校書道部/河合克敏(全14巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

曲にあわせて筆をダイナミックに走らせ、書の意味を自由に表現する揮毫・・・修二とアキラの『青春アミーゴ』の歌詞からはじまった本作。部員が5人いないと廃部という危機に、半ば騙されるように入部した新入生二人はどうなっていくのか

一見、地味な書道というモチーフを生き生きと描いた本作。意外と熱いんです!ラストはこんなに目頭が熱くなるなんて思わなかったなぁ・・・

私的感想

潰れそうな書道部に入ってきたのが逆紅一点の帰国子女の大江縁(えにし)。ハーレム状態かと思いきや、どちらかというとキャラの強い女性陣の尻に敷かれてる状態で。もう一人の新入部員は柔道で全日本2位の望月結希。ひょんな事で、縁の手を怪我させてしまい、その責任をとり(これも、先輩たちの陰謀で)、臨時部員となるも、帰国子女の縁よりも字がヘタクソで・・・結局、結希は書道部に残ることになり(柔道部との掛け持ち)、二人の対比が書道の白と黒のコントラストのように盛り上がりをみせてきます。

対比といえば、縁は男のくせに細くひょろひょろとした字。一方の結希は男勝りの太く大胆な文字。そんなところも、キャラを表していて面白く。

他の部員も、一筋縄でいかない先輩二人、中国歴史オタクの顧問やしっかりものの部長と、うまいキャラ設定で。顧問や部長の書道薀蓄(ウンチク)も嫌味な感じでなく、普通に「へー」と感心するような感じで、違和感なく書の世界を知る事ができます。他にも、縁のおばあちゃんや、書の大家、結希をつけまわすアフロのヅラを被った柔道部員・・・と、一癖も二癖もあるキャラが入り乱れ、静かな書の世界を盛り上げてくれます。

ライバル校の凄い書をみせられ、さらに書の奥の深さを知り、刺激を受ける新人2名が練習を積み徐々にしっかりとした書を書けるようになるのは、ちょっとしたスポ根マンガに負けてない熱さです(それもそのはず。作者は帯をぎゅっとねとかスポーツ漫画も得意な方ですから)

日本人ですからね。いい字を書き、字の奥深さを知るのは大事だと思いますが、なかなか敷居がたかい書道の世界をテンポよく読ませてくれる本作はなかなかの傑作ではないでしょうか。

下記、小学館のサイトでお試し読みができますよー

とめはねっ! 鈴里高校書道部 | 書籍 | 小学館

 

若干のネタバレ

書の楽しさ、って自分みたいな凡人には良く分からない世界ですが・・・こんな簡単にそれを分からせてくれる漫画が本作。いや、別に書道なんて興味ないし・・・って人は勿体ない。モチーフが書道で、書道の世界を楽しませてくれる作品ではあるけども、出てくる人たちの人間模様には、ちゃんと涙も笑いも感動もあります。
ストリートで○○○の曲を流し、○○○の恰好して(伏せてる部分は実際に読む楽しみにとっておいて!)、歌詞だけじゃなくドラマの美味しい台詞を書いている彼らの楽しそうな事といったら!一方で、ちゃんと書に向かい合う時は真剣そのものだし・・・書に限らずだけど、何か小難しそうなテーマを堅い説明調にならずに表現するって凄いことだと思う。
物語も市民書道大会、ストリートパフォーマンス、合宿に文化祭、そして書の甲子園・・・と、テンポよく進んでいきます(ところが、書の甲子園は・・・あー、いろいろ言いたい。ネタバレOKの場でも、これは・・・作品を読む楽しみにとっておかなければ・・・悩)。もちろん、青春マンガに必須の恋もあります。
強いていえば、主人公の縁の影が薄く、結希のキャラが濃すぎるのが難・・・でも、マンガにデフォルメは付き物だし・・・と。でも、この二人。恋に発展するか、ちょっとワクワクするんです。でも、違う個性は、同じ書の世界で切磋琢磨するライバルなのかな。

とにかく、『書』いう堅い題材を静かにそして力強くみせてくれるパワフルな作品。書に興味ない人でもグイグイと奥深さに惹かれていくことでしょう。彼らの成長をワクワクしながら楽しんでもらえる作品です。

最後は、書のチカラを限りない愛情をもって描かれています。このラスト・・・ちょっと涙なしでは読めないかも。
あー、この漫画、好きだなぁ~