完結漫画ブログ

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予告犯/筒井哲也(全3巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

中学生がゲームソフトの違法アップロードを警察が家宅捜索するところから物語は始まります。被害額が450億円という警察に対し、カネをもらってもいないし盗んでもいない、と主張する中学生。さらに、「俺はボランティアでゲームの宣伝をしてやったんだ」、「権利・権利ってケチくせーこと言ってるから国産ゲームがどんどん海外に置いて行かれる」と。自分の主張は正しい、ツイッターには自分を擁護するリプがばんばんきてるはずだ!と画面を覗くと、そこには「クソワロタ」「ざまぁ」「めしうま」の文字が並んでいた・・・

この逮捕劇にかかわったのが警視庁サイバー犯罪対策課。その25歳の吉野警部補は多少もの言いがキツイもののセクシーで不愛想な女性。

そんなサイバー犯罪対策課が、動画サイトの犯罪予告を調査することに。『シンブンシ』を名乗る男の犯罪予告・・・誠意を欠く食品偽装の工場を燃やし、外食店でGを揚げてSNSで炎上したアルバイトに特性メニューを腹いっぱい食べさせ、男にホイホイついてく女が悪いとSNSで炎上した学生に元気玉を注入、採用試験にあらわれた30代のオッサンの笑いものにしたIT会社の会社員に私的制裁をくわえ・・・
ネット上では次第に『シンブンシ』の活躍が注目を浴び支持を得るようになっていく。

情報の発信元のマンガ喫茶で使われていた会員証の名前「ネルソン・カトー・リカルテ」とは?シンブンシの目的は一体?

どんな時に読みたい?

漫画喫茶で、2~3時間ぐらいでキリのよい漫画を読みたい人。

今の社会に不満をためこんでいる人。

私的感想

シンブンシは言う。

『俺がこの世で最も憎んでいるものはお前達の中から自尊心を奪おうとする何かだ。それはこの社会のどこにでも隠れている・・・(略)・・・俺はお前達の生活を助けてやることはできないが、お前達が今、鬱積させているその感情を救ってやることはできる』
と。 この言葉が多かれ少なかれ分かる人間は、社会の理不尽さに耐えて生きている人たちだと思う。自尊心を奪う側の人間にはこの言葉は分からないだろう。人の自尊心を奪うことは、その人の心を可能性をすべてを狂わせる。 相手から奪っていることにすら気づかず、気にも留めない人間が少なからずいる。

本作は世の中の理不尽さに、ITのチカラで制裁をくわえていく。それでも、彼らができることはゲリラ的な単発の制裁にすぎず、それで社会が劇的に変わるわけでもない。
『 シンブンシ』たちもそれは分かっているはず。彼らは何を言おうとしているのか。

全3巻、圧倒的なスピード感で、彼らの反発の理由が露呈していきます。気軽に読めますが、気軽に手をだすと、ガツンとやられる・・・そんな一作だと思います。

 

お試しは、下記集英社のサイトからどうぞ

sokuyomi.jp

若干のネタバレ

1巻で、シンブンシたちの過去が分かります。社会にうまく溶け込めなかった若者、彼らが生きてくために集められた日雇い労働は、違法な労働環境で、倒れた仲間に手を差し伸べることすら許されない劣悪な労働環境。

そんな現場でも助け合っていた仲間がいた。仲間の一人が倒れても顔色かえずに「腐る前にさっさと埋めろ」と、言う現場監督。そこから、彼らの復讐がはじまる。自分たちのためでなく、仲間のために・・・ 彼らは理不尽な社会に牙をむき、警察のチカラを使って、彼らの目的を果たそうとする・・・

人が死ぬほどの労働環境で無くとも世の中には理不尽な現場が多々あります。たかだか数年、入社が早いだけで上司ヅラしてる連中の理不尽な言動。逆らえない立場にいるものに不当な圧力を加える彼らがどれだけ恨みを買っているか・・・そういうことに無神経な人間が上に沢山いる。

人の恨みを買う事の意味が分からない人間が上に立つような社会が、どうすれば是正されていくのか・・・そんなことを考えてしまう作品でした。

 

虐げられている者の心の中に『シンブンシ』は存在します。