完結漫画ブログ

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響~小説家になる方法~/柳本光晴(全13巻)

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この漫画のオススメポイント

とにかく、響が破天荒!
こうすれば小説家になれる…とか正直かんけいない。ぶっとんだ少女が、常に強い自己主張をして世の中を突き進む姿に、ただただ溜息しか出てこない。

漫画だから、その強烈な個性もいい結果しか出てこない。その辺り賛否両論あるみたいだけど、実際にはありえない程の自己主張が生み出すトラブルを楽しんだもの勝ち!かな?

 

私的感想

良くも悪くも話題になるのが分かります。また、映像化されるのも理解できます。ただ、反発も多いでしょうね。アマゾンレビューも3を選択する人が少なかった一方で、好印象(4と5)の人と悪印象(2と1)の人が、ちょうど半々ぐらいだったし。びっくりするほど、好き嫌いが激しい作品。

評価が悪い点は次のような点が多い。

・響というキャラクターの歪んだ性格が好きになれない
・才能があれば許される設定がどうなんだろう?
・その小説がどういうものなのか全く凄さが伝わらない
・すごいといっても努力も何もない才能だけで突き進んでる姿に共感も何もない
・解決方法が基本的に暴力
・リアリティに欠けてる
・そもそも絵が好きじゃない(もしくは絵が下手)
・これを読んでも小説家になる方法は分からない。サブタイトル詐欺

うん、わかる(ぉぃ)

一方で、良い評価をしてる人に多いのが

・主人公のぶっ飛び具合が凄い(漫画に道徳性・倫理観・共感なんて必要?)
・細部はさておき漫画として面白ければいい
メガネ女子

良くも悪くも、好き好きがハッキリしてる作品。万人が愛せる作品では無いことは確か。個人的には、それでも漫画としての勢いとかエンターテインメント作品としての見せ方がよかったので楽しめたのだけれど。
漫画の世界の中で突拍子もない人を観察している・・・そんな感じ。変な人って面白いし、漫画の世界だから多少荒唐無稽であっても許されるかな、と。

読んでて、曽田先生の「昴」を思い出しましたね。昴ちゃん程のカタルシスは無いけど、逆にそれが無いことが気楽だったり(そういう意味では昴は本当に重厚で稀有な作品で…あんな重い作品ばっかりじゃ心が折れてしまうかも)

www.shogakukan.co.jp

↑↑小学館の公式サイトはこちら(試し読みできますよー)

 

 

若干の…ネタバレ

(いつも通り)レビューとか見ずに手にとって、気楽に楽しんでましたが、読後は結構いい感じでした。他の方はどう感じたんだろう?と思って感想を見てたらびっくりするほど評価が割れてて、ちょっと考えさせられました。

先に挙げたように、悪評も分かります。特に絵は・・・もう少し頑張ってほしい感じがする(頭身がおかしくなったり、表情が雑だったり…)。
これを読んでも『小説家になる方法』が分からない・・・サブタイトル詐欺だ!てのも分かるし、何より、すべて暴力ってのも「う~~~~~ん」って思う気持ちも分かる。でも、漫画だからできる事ってあると思ってて、現実にあわせて制限しちゃうと漫画の魅力も半減しちゃうと思ってる(だから、個人的にはある程度の現実離れであってもそれは否定要素として捉えていません)。

それでも、強い個性ってのは惹かれてしまう。

響は、女子高生でありながら自分の好きなことにかける情熱は誰にも負けない。負けないどころか、それ以外は不要と切り捨ててしまうような未熟な人間だ。僕みたいな平凡な人間と違って、主張しかしない、そんな強すぎる怪物だ。そんな怪物が、常識とか大人のエゴをバッサリと切り捨てていくのは痛快そのものだと思う。ただ、ちょっとその無双ぶりが強すぎて、ひく人も少なくないかもしれない(実際にいたら、明らかに近寄りたくないキャラクターだ)

もう1つ、この作品で良かった点を挙げるとするなら『自己を曲げない彼女が、文芸部の人とのかかわりは何故か大切にしている』という点だ。小説以外の事は全くといっていいほど頓着していない彼女が、巻き込まれた部活動を辞めずにいつまでも続けている。彼女にとっては、メリットどころか負担の方が多いはずなのに、他の部員の頼みで小説を書いてあげたり、文芸コンクールに付き合わされたり。でも、拒まない。そこの統一性のなさが彼女の成長の1つだと思う。

最後にエンディングのこと。正直、悩ましいところだった。最後の3話ぐらいはどれもエンディングになりそうで、どれもイマイチでまとまらない感じがした。
卒業式の話では、生徒会長のように学校を支えてくれてる人を評価しつつも新しい世界が楽しみで仕方ない、という響の顔。イギリスでは、転居先のルームメイトの音楽を楽しみつつも歌詞にダメだしする相変わらず空気の読めない彼女の変わらなさ、そして十数年後の部室で後輩にババア呼ばわりされて切れる彼女・・・正直、情報が多すぎで蛇足感が強かった。せいぜい、『エンディング』と『その後』程度でよかったのではないかなぁ、と(イギリスのエピソードは巻末漫画にしてその分、卒業式の方を深く掘り下げた方がきちんとまとまった気がします)

とまぁ、いろいろ賛否両論の視点で好き勝手な感想を書いてみましたが、個人的には幼馴染のイケメン君の変人ぶりがあまり発揮されてなかったのが残念でした。響の写真に囲まれた自分の部屋・・・そんな彼の変態的な純愛はもっといい武器になった気がする。それが活用されずに終わっちゃったのが、一抹の物足りなさでしたが、勢いよく読み切って楽しめば、そこまで批難される話でもないかな・・・いい作品だと思います。 

トラップホール/ねむようこ(全4巻)

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この漫画のオススメポイント

20代~30代の女性はむずかしい。恋に仕事に、頼りなげな綱の上を渡るがごとく、必死で生きていても、思いもがけない方向からノックアウトされたりして。逃げたり、男に頼ったりすがったり、そんなの格好悪いなんて分かってる。けど、気づいた時、自分がいたところは?!

こんな上手くいく話ばかりじゃないかもしれない。けど、悩ましい年代の女性たちの悩みの片りんが見えるかもしれない。そして、それは男も知っておいて損はないかも?

私的感想

この本を勧めた数名に「絵がきれいな作家さんだねー」という感想がありました。もとは、イラストレーター・デザイナーさんの畑ぽい。構図もコマ割りも、ちょっとおしゃれな感じで(そういう意味では連載雑誌のFEEL YOUNGイズムというか)。

地方では大手の会社で恋に仕事に忙しかった主人公のハル子。どこか息苦しさが無くもないけど、友達に恋に仕事に順調で、そろそろ結婚・・・なんて矢先に、まぁ、ありがちな、感じで破局。その時、たまたま話を聞いてもらいやすかった限りなく見知らぬ人に近いかんじの元クラスメイトのきまぐれに乗って東京に!という滑り出し。

いろんな人が感想に書かれてますが、展開が早いです。でも、それが雑って感じではないと思います(ただ、もっと深く書けるじゃん?なんて声もありますが…この作品はこのスピードで楽しめると思うんだけどな)。

 

なんだかんだと脇が甘いと言われてしまえばそれまでかもしれないハル子。でも、逃げられるところがあるなら逃げたい!て思う事は誰しもあるはず(そういう時に、逃げる場所があるのはお話の中だから、それが無いと話が始まらない^^)

そうやって逃げて、逃げた先の男に抱かれたら、憑き物が落ちたかと思うぐらい悩んでたことが落ちて行って・・・あぁ、体を重ねるってすごいなぁ、て思ってたら実は妻帯者、みたいな。

奥さんがいないって「いいトシこいたら、”知らなかった”は罪」という奥さんの言葉が響く・・・そんな年齢。文字通り裸一貫で追い出されたハル子。助けてくれた女の子も一筋縄ではいかない劇団員の女の子の歩

最初はうまくいってた二人。ところが、徐々にかみ合わないところが見えてきて・・・

価値観の相違がうみだす、修羅場。でも、その価値観っていったい?!いろんなものを失って気づく。自分って何?!

なんだかんだと流され続けるハル子がたどり着く先。こういう生き方もあるかと思えば、道って思った以上にたくさんあるのかもしれないし、気づけばそこは闇ばかりでないのかもしれません。

http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396765699

↑↑祥伝社の公式サイトはこちら(試し読みはできないです)

 

 

若干の…ネタバレ

流されて、安易に男の体に頼ったら、そりゃ、批判されますわな…って感じのamazonレビュー(笑)ですが、それも分からなくもない。ただ、世の中には(同性からみれば、単なる節操なし!と、嫌悪されるかもしれないけど)、不本意ながらこういう生き方をしてる人も一定数いて、彼女たちは悪気が無く一生懸命やっている。
たまたま、話を聞いてくれる都合の良い他人がいて、彼女なりに一生懸命考えてその彼の言葉に乗っかって東京に出た・・・そんな無茶をしてみたいそんな彼女が愛おしく感じるのは自分が男だから…なのかしら。

ただ、Amazonレビューみてても、批判的な層は一定数いますが(それはどの漫画でもそうですけど)、多くは好意的にみてる。まぁ、大変なことから男に逃げるような女が合わない人には合わないかもしれません。誰しも弱ってる時はありますわな。ハル子が本当にビッチなら、こんなに悩ましい展開にはならずに、もっと楽に生きれると思います。そうならないのが、彼女の良さであり、世の中の難しさであり…かな。

さて、この本の面白くなってくるのは、後半で。

東京に出ていい出会いをしてバンバン仕事をして、そしたら前の男を見返せる!なんて思ってたハル子。人に愛されたいなぁ、望まれたいなぁ、なんて望むハル子。そんなダサイ事を考えてる自分に驚きつつも、そのむき出しの本能に従って東京にいることを続けるも、居留守にあって財産も何もなくなって、でも、傷を舐めあうのにちょうどいい相手もみつかって・・・

でも、そんな彼女の生き方を、今まで友達だと思っていた歩に面白おかしくネタ(脚本)にされるあたりから、話はさらに加速していきます(歩のふるまいが許せなくて、この本を読むのやめた人も少なくないみたいだけど、ちゃんと作者はケリをつけてくれるので、ここは乗り越えるべき壁かと)。求められるのが当たり前だった自分、免許証をなくして証明できるものをもたなくなった自分、そんな自分を誇張してネタにされたハル子。何もなくなった彼女は、そこに新たな絵を描けるほどに若くもなく・・・

そして、また逃げようと

でも、彼女をつないだのは、彼女の生来の生真面目さというか、たわいもない約束が彼女をつなぎ留めます。一度ゼロになって、改めて自分の周りを見た彼女の景色はどうなっていくのか。それに気づいたハル子、最後には歩たちの舞台で彼女の幕もおりるのです。

こういう時間、長くて短い人生の中では大切な気がする。好きだ腫れただ、くっついて離れて、入れて出して…大人になればこっぱずかしくて黒歴史としてしまいたいような、そんな時間。この時間にちゃんとケリつけてあげないと、大人になっても拗らしてしまう気がします。

 

個人的には、くるみちゃんの立ち位置が好きです(ちょっと太めだけど)