完結漫画ブログ

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トラップホール/ねむようこ(全4巻)

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この漫画のオススメポイント

20代~30代の女性はむずかしい。恋に仕事に、頼りなげな綱の上を渡るがごとく、必死で生きていても、思いもがけない方向からノックアウトされたりして。逃げたり、男に頼ったりすがったり、そんなの格好悪いなんて分かってる。けど、気づいた時、自分がいたところは?!

こんな上手くいく話ばかりじゃないかもしれない。けど、悩ましい年代の女性たちの悩みの片りんが見えるかもしれない。そして、それは男も知っておいて損はないかも?

私的感想

この本を勧めた数名に「絵がきれいな作家さんだねー」という感想がありました。もとは、イラストレーター・デザイナーさんの畑ぽい。構図もコマ割りも、ちょっとおしゃれな感じで(そういう意味では連載雑誌のFEEL YOUNGイズムというか)。

地方では大手の会社で恋に仕事に忙しかった主人公のハル子。どこか息苦しさが無くもないけど、友達に恋に仕事に順調で、そろそろ結婚・・・なんて矢先に、まぁ、ありがちな、感じで破局。その時、たまたま話を聞いてもらいやすかった限りなく見知らぬ人に近いかんじの元クラスメイトのきまぐれに乗って東京に!という滑り出し。

いろんな人が感想に書かれてますが、展開が早いです。でも、それが雑って感じではないと思います(ただ、もっと深く書けるじゃん?なんて声もありますが…この作品はこのスピードで楽しめると思うんだけどな)。

 

なんだかんだと脇が甘いと言われてしまえばそれまでかもしれないハル子。でも、逃げられるところがあるなら逃げたい!て思う事は誰しもあるはず(そういう時に、逃げる場所があるのはお話の中だから、それが無いと話が始まらない^^)

そうやって逃げて、逃げた先の男に抱かれたら、憑き物が落ちたかと思うぐらい悩んでたことが落ちて行って・・・あぁ、体を重ねるってすごいなぁ、て思ってたら実は妻帯者、みたいな。

奥さんがいないって「いいトシこいたら、”知らなかった”は罪」という奥さんの言葉が響く・・・そんな年齢。文字通り裸一貫で追い出されたハル子。助けてくれた女の子も一筋縄ではいかない劇団員の女の子の歩

最初はうまくいってた二人。ところが、徐々にかみ合わないところが見えてきて・・・

価値観の相違がうみだす、修羅場。でも、その価値観っていったい?!いろんなものを失って気づく。自分って何?!

なんだかんだと流され続けるハル子がたどり着く先。こういう生き方もあるかと思えば、道って思った以上にたくさんあるのかもしれないし、気づけばそこは闇ばかりでないのかもしれません。

http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396765699

↑↑祥伝社の公式サイトはこちら(試し読みはできないです)

 

 

若干の…ネタバレ

流されて、安易に男の体に頼ったら、そりゃ、批判されますわな…って感じのamazonレビュー(笑)ですが、それも分からなくもない。ただ、世の中には(同性からみれば、単なる節操なし!と、嫌悪されるかもしれないけど)、不本意ながらこういう生き方をしてる人も一定数いて、彼女たちは悪気が無く一生懸命やっている。
たまたま、話を聞いてくれる都合の良い他人がいて、彼女なりに一生懸命考えてその彼の言葉に乗っかって東京に出た・・・そんな無茶をしてみたいそんな彼女が愛おしく感じるのは自分が男だから…なのかしら。

ただ、Amazonレビューみてても、批判的な層は一定数いますが(それはどの漫画でもそうですけど)、多くは好意的にみてる。まぁ、大変なことから男に逃げるような女が合わない人には合わないかもしれません。誰しも弱ってる時はありますわな。ハル子が本当にビッチなら、こんなに悩ましい展開にはならずに、もっと楽に生きれると思います。そうならないのが、彼女の良さであり、世の中の難しさであり…かな。

さて、この本の面白くなってくるのは、後半で。

東京に出ていい出会いをしてバンバン仕事をして、そしたら前の男を見返せる!なんて思ってたハル子。人に愛されたいなぁ、望まれたいなぁ、なんて望むハル子。そんなダサイ事を考えてる自分に驚きつつも、そのむき出しの本能に従って東京にいることを続けるも、居留守にあって財産も何もなくなって、でも、傷を舐めあうのにちょうどいい相手もみつかって・・・

でも、そんな彼女の生き方を、今まで友達だと思っていた歩に面白おかしくネタ(脚本)にされるあたりから、話はさらに加速していきます(歩のふるまいが許せなくて、この本を読むのやめた人も少なくないみたいだけど、ちゃんと作者はケリをつけてくれるので、ここは乗り越えるべき壁かと)。求められるのが当たり前だった自分、免許証をなくして証明できるものをもたなくなった自分、そんな自分を誇張してネタにされたハル子。何もなくなった彼女は、そこに新たな絵を描けるほどに若くもなく・・・

そして、また逃げようと

でも、彼女をつないだのは、彼女の生来の生真面目さというか、たわいもない約束が彼女をつなぎ留めます。一度ゼロになって、改めて自分の周りを見た彼女の景色はどうなっていくのか。それに気づいたハル子、最後には歩たちの舞台で彼女の幕もおりるのです。

こういう時間、長くて短い人生の中では大切な気がする。好きだ腫れただ、くっついて離れて、入れて出して…大人になればこっぱずかしくて黒歴史としてしまいたいような、そんな時間。この時間にちゃんとケリつけてあげないと、大人になっても拗らしてしまう気がします。

 

個人的には、くるみちゃんの立ち位置が好きです(ちょっと太めだけど)