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リブラブ/小田ゆうあ(全7巻)

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この漫画のオススメポイント


『斎藤さん』でお馴染みの小田ゆうあの作品。
一生懸命いきてきたはずの水上素直は、仕事も恋も何もかもがうまくいかず全てが上手くいかない非コミュの25歳。
そんな彼女が大きな失敗(吸い殻の不始末のボヤ)で、責められ全てを投げ出し命を絶った。
死んでも楽になれない、苦しい・・・そんな彼女がたどり着いた先にいたのは?
お節介&予定調和感は確かにあるかもしれませんが、相変わらずの小田ゆうあな作品で生きる意味を考えさせてくれるいい作品だと思います。

 

私的感想

ドラマ化された「斎藤さん」にしても、「ふれなばおちん」などの他の作品にしても、ちょっとお節介な感じのある主人公が多い小田ゆうあ作品。

全7巻。展開が早く、といっても、描画が雑なわけでもなく、サクサク読めると思います。人によっては漫画喫茶で数時間ってところでしょうか。

 

本作の主人公は2人。コミュ障の水上素直(25歳)と、素直の同僚のお節介オバサンの伊佐子と、その友達2人。

生きてた時の水上素直は、名前とはまったく正反対の素直じゃない頑なな女の子。周りに対して牙をむき、理解してくれない周囲を嘆き、人生の不遇で目が周囲がみえなくなってる悪循環に陥ってるような子。一生懸命いきてるはずなのに、それを嘲る同僚を小馬鹿にして自尊心を保つ・・・そんなタイプ

人生を嘆き命を絶った彼女が、死んでも終わらない苦しみに気づき永遠の絶望の前で気づいたらお節介オバサンの前に。そして、幽霊になった素直が見えてしまう伊沙子がとのやりとりの中で、硬い鎧の中にいた素直が、徐々に素直なすなおちゃんに変わっていく!!

そして、世代の違う3人の女がそれぞれ抱えてる悩みにぶつかる幽霊のすなおちゃんのパワーが、臭いものに蓋をしてきた彼女たちの人生までも変えていく…痛快コメディな側面と、非コミュのすなおちゃんが幽霊になって初めて人の気持ちに触れ、自分を見直し成長していく、そんな側面がうまい感じで話を盛り上げていきます。

でも、単純に笑ってばかりもいられない。自分にもどこか重なるところがあってギクリとさせられることも。

いろんな問題が解決していくなかで、根本的な問題・・・すなおちゃんが成仏できないのは何か思い残した事があるんじゃない?って。
そして、生前のすなおちゃんが唯一といってもいいぐらい大事にしていたリブラブというバンドのボーカル「弾」と言葉を交わすまでに。
すなおちゃんの魂がだんだん昇華されていって、でも最後は読み手の思い通りにならない多少の痛みを残して、話はきれいに締められます。


誰とも繋がれないすなおちゃんの心の叫びに読むのが切なくなることもありますが、基本的に暖かい気持ちで読み終えることのできる予定調和な良作だと思います。


そして、「いきること」というのがどういう意義があるのか、って、その凄く難しい問題への作者の回答が見事な感じがします(それはネタバレの方で・・・)

 

多分、映像化されそうな・・・そんな感じがしますね。

↓気になった方は公式サイトで試し読みができますよ↓

 

officeyou.shueisha.co.jp

 

若干の…ネタバレ

いかにもオフィスユーの連載作って感じの小田ゆうあ作品。
基本的にメインターゲットがF1層~F2層。でも、T層後半やM1層、M2層でも面白いと思う(これって、集英社の色なのかしら。ジャンプ世代には違和感ない感じがする)

さて、いきなり結論。

自分のために生きている人には見えない世界・・・特に若い頃は、なんだかんだと自分が大事だったりするけど、自分以上に大切な人が見えた時に人はサナギから脱皮する蝶のように、まったく変わって光り輝くものだと思います。それが恋人でも何でもいいんだけど、自分の長年の夢よりも、同性の年上のオバサンを大事にすることができたすなおちゃんの気持ちがホント胸に刺さります。生前は「(自分が)苦しい」、「(自分は)わかってもらえない」、と、何につけても「自分が、自分が」だった彼女。長年すきだったバンドのボーカルの呼びかけよりも、大事だったのは、好きになった「みよねーさん」。

そんな彼女が思うのです。死んだら、聞こえない、届かない・・・大事な人に何もしてあげられない
生きるって、そんな出会いを作っていくものなんだなぁ、てのを思うと、目が熱くなりましたよ。

生きていれば、彼女にも起きえた理解してくれる人とのつながりも・・・命を絶った彼女には手に入らない。もちろん、幽霊となったから得られたものもたくさんあったのだけど、いろいろと遅かった。誰かのために向けた優しいパワーを、自分にも向けてあげて、自分を大切にしてあげればよかった・・・

過去のツライ思い出の先に、乗り越えた先に、こんな暖かい世界があったんだ、と気づいて、自殺を後悔した瞬間に彼女は成仏します。
幽霊のすなおちゃんが出会った人との記憶を全て奪って(ただし、伊沙子以外)、満面の笑みで自分の過ちを悔いるのです。

人は過去に戻れない。生きてることは苦しいこともいっぱいある。先にあるのが幸せな明日か分からない。それでも、生きるしかない。優しく生きて、優しく愛して・・・