17(ジュウナナ)/(全5巻)
この漫画の概要・オススメポイント
高校生活三年目、最後の一年の物語。
主人公のヒロイン詩歌と、中学から4年間交際している彼氏の祐介、親友の明と彼女が憧れている恵亮太という不思議な雰囲気をもつ男の4人の甘酸っぱい青春学園物。卒業・進路・・・と人生の大きなイベントを前に、今まで通りでいられない彼らの将来はどんな彩りを見せるのでしょうか。
登場人物の揺れる心理やイベントに多少の重苦しさがあるものの、前に進もうとする若者たちの強さと弱さ・・・その不安定さを、高校卒業直前の1年に絞って描かれている本作、適度な棘がありながらも気楽に読める感じ、悪くないかと思います。
私的感想
だらだらと高校時代を描くのではなく、高校最後の1年に絞っているのは個人的に好感が持てました。1年に絞っているので、気負わず読めます(5巻完結ですが、1時間で読み切れるかも?)
話の彼氏の祐介を元気に(多少、無神経に)応援していた主人公のヒロイン詩歌に対して、徐々に溝を感じていた祐介、そして二人の恋をみて元気をもらったという恵が軸に話が進んでいきます。自分の恋に自信を無くしかけていた詩歌に恵が言った次の言葉に、詩歌は勇気づけられます。
自分のこと信じて疑わない人が
そばで ただ 見ててくれるなんて
相当シアワセだと思うけど
なんにもはずかしいことないよ
でも、その恋は次第に色あせていく運命でした。将来のビジョンの違いからすれ違う事が多くなってきた二人・・・どちらが悪いでもなく、でも一緒にいられない事に二人が気づくシーンは、物分かりが良すぎるきらいはあるものの、彼らの精一杯の姿勢に好感が持てるかと思います。
そして、詩歌がその痛みを乗り越えられたのも恵がいたから。・・・そうなると、恵のことが特別に思えてくるのも必然で(ありがちなパターン)。一緒にいて楽しい、恵の笑顔がみれて嬉しい・・・そう思ってた詩歌が徐々に想いを募らせていきます。
で、気づいた時には想いが零れてしまった詩歌。一方、その言葉に、強い拒絶を示す恵。その拒絶の原因を知り、それでも一緒にいることを選び…と、ストーリーはそんな珍しくもなく、だからこそ安心して読める感じ。
そして、3年生には将来をどうするか、という話になってくるのですが・・・友人たちがきちんと目標を定めていく中、何もない詩歌。恵ですら、東京でかなえたい夢があるというのに。彼のそばにいれればいい、と、安易に東京に行こうとする詩歌に、東京の町は優しくなく・・・。まぁ、その後も基本的に予想通りです。
個人的には恋愛がメインすぎるのが、ちょっと勿体ない感じがするのですが、この時期の彼らにとっては仕方ないですね。相手の事を思って我慢することは苦痛かもしれませんが、自分が望む姿がきちんと描ければ・・・前を向けるんですけどね。当時の自分にも、それがよく分かってなかった事とか思い出しちゃいました。
全体的に、サクサク読めるライトノベルのような感じです。多分、男性でも読みやすい作品だと思います。
だからって、ちょっとした気分転換で読んで、当たり所がわるいと、ずっしりとボディブローくらうかもしれない。そんな感じの漫画でした。
若干のネタバレ
今まさに同世代!という人でなければ、悪く言えば『軽い』作品です。ただ、その軽さはこの世代に与えられた財産ともいえるものかと思います。年を重ねれば嫌でも結果や意味を与えなければいけないわけですから。
そういう意味では、もう高校時代なんてだいぶ前の話・・・という人にこそ手にとってもらいたいかもしれません。あの頃、こういう青春を過ごせた人はそれを懐かしみ、そうでない人はその時代を疑似的に感じる・・・と。
ヒロインの詩歌は、おそろしいぐらいに無神経で無邪気で元気な子です。現実の人間はたとえ高校生であっても、もっとドロドロしてたりしますが、そこは、まぁ漫画ということで(詩歌がもっとドロドロしていたらそれはそれでまた違った面白い作品になりそうなのですが)。相手役の恵も、過去の彼女に対する不実をいつまでも忘れられず自分を許せない・・・という、基本的にいいヤツです。過去の自分を許せなくても、折り合いをつけて前をみていくのが普通だと思うのですが、折り合いをつけられないのが若さなのかもしれません。そういう甘酸っぱい姿がいっぱいの作品です。初心を思い出させてくれるようなそんな感じ・・・かな?
うまくいく恋もそうでない恋も、人を大きく成長させてくれるものだとは思います。それでも、自分をしっかり持ってないと絶対にうまくいかない。相手に対しておんぶにだっこじゃ自分には何も残らない。それは当たり前のことかもしれませんが、きちんと生きる上でとても大事なことなので、改めてこういう甘酸っぱい漫画で思い出してみるのも良いかもしれません。