34歳無職さん/いけだたかし 全8巻
この漫画のオススメポイント
34歳無職の女性の日常をゆるく描いた作品。
一般に働き盛りと言われる人生の最盛期に「1年間何もせずにいよう」と決めた無職さん。新しい掃除機に一喜一憂したり、夜の街に耳を済ませて銀河鉄道に想いを馳せたり・・・おそろしいほどノンビリした無職さんの日常がここにあります。
せわしない時間の中で、充実した人生を送らなければいけないと慌ててしまう現代人の悩みに一石投じた作品なのかもしれません。たまには、こういう寄り道も必要な気がしますが、ほとんど刺激は無いので、それを求める人には不向きかもしれません。
どんな時にオススメ
漫画喫茶に5~6時間ぐらいでキリのよい漫画を読みたい人。のんびりした緩い感じの漫画が読みたい人。
私的感想
いろいろあって無職になった34歳の無職さん。この『いろいろあって』の部分はゆっくりゆっくり明かされていきますが、基本的には淡々と無職の方の日常が描かれているだけの漫画です。とはいえ、ニートともまた違う。ちゃんと生活をして、些細な事で悩んだり、漠然とした不安に心が揺れたり、虚しさに襲われたり・・・。客観的でも悲観的でもない、なんとも妙なバランスの無職さんの日常が描かれています。
全体的に、展開がゆっくりしてます。たとえば、掃除機の吸引がイマイチで新しいものを買おうかどうかを何日もかけて悩む・・・といった感じの時間の流れ方です。ですので、激しい展開やドラマを求めてる方には難しい作品です。無職さんのゆっくりした地味な時間のなかからワビサビみたいなものを勝手に感じて、なんとなくな雰囲気を楽しむ作品です。
多くの人が、仕事に家庭に・・・と忙しい生活を過ごしていると思います。人間関係で頭を悩ます事も少なくないと思います。この無職さんみたいな生き方をしたいと思ってもなかなか出来るもんじゃない。彼女の生活を垣間見て・・・羨ましくもあるけど、怖くもある。逆に今の自分にホッとしたり。
あえて、スピードを遅くすることの大切さを感じられる作品だと思います。
若干の…ネタバレ
実は、無職さん、バツがついてる方でした。
後半、前の旦那や家庭と、子供が出てきて、ほんのちょっとだけ無職さんの心がザワザワしてきます。それでも、全体としてゆっくりしてるんですけどね。
一生の中で、何も求められず、ただ生きるだけの時間をもてるのは、ちょっと羨ましいかもしれません。仮に1年と区切って無職になったとして、簡単には社会に戻れないのが現実だったりしますから。
いろんな『しがらみ』を捨てさえすれば、この生活に手が届くのかもしれない。けど、一度きりの人生の中で、それを簡単に捨てるのはなかなか出来ることじゃない。
そういう生き方もあるんだろうな・・・と憧れつつ、今の自分の日々をしっかり生きるしかないということを改めて考えさせてくれた作品でした。