完結漫画ブログ

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BTOOOM/井上 淳哉(全26巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

オンラインゲームBTOOOMに没頭し、自宅で引きこもっている坂本竜太ら32人の落後者が無人島に集められ、お互いがもつ爆弾を投げ合って相手を倒しチップを8枚手に入れないと島から脱出できないリアルボンバーマンなバトルロイヤル作品。

連載が、「コミックパンチ」とメジャーな雑誌ではないものの多くの支持を集め、アニメ化、スマホゲームと他メディアでも盛り上がりを見せてる本作。似たような作品が多く焼きまわし作品などの批判もありますが、ただの派手な殺し合いじゃなく、しっかりと考えさせる作品になっています。オススメ!

私的感想

主人公がニートなのに運動神経バツグンすぎて現実離れしてたり、ヒロインとの駆け引きあたりご都合な感じで、ちょっと厨二ぽい?という感じもありますが基本的にテンポが良い作品なので、気にしないで読んだもの勝ちだと思います。

また、どこかで見たような設定を集めてテンプレートに落とし込んだ・・・とか、バトルロワイアルの劣化版などと厳しい評価も否めないところもありますが、同じテーマを扱った作品を描くのに問題があるのであれば、どのジャンルでも似たような設定はあるので、それは許されていいと思います。問題は、そこにどういう味付けをするか・・・といったところでしょうか。

個人的に気になったのは作画。最初は絵が雑でも巻をおうごとに絵が上手くなっていく事はよくありますよね。でも、本作は全体的に絵はまとまってるんですけど、時々、妙なバランスになったり顔の印象が変わったり・・・そのせいで、時々のめりこめない時が生じたりしました。まぁ、細かい点ですけど。

・・・と、いろいろ批判は多いです。amazonレビューでも1~3巻ぐらいは批判も多いですが、最後に行くにつれて評価はどんどん上がってたりします(まぁ、批難するひとは26巻まで付き合わないと思いますが)。この辺りは好みの問題だから仕方ないですけど、そこまで悪い作品ではないと思います。好みはあると思いますが・・・そのような批判があっても、オススメできる作品です。

本作では、無人島に人生の落後者たちを集めました。人を信じられない不信感の塊のような連中です。ゲームをクリアできるのは限られた人間だけ(32人が参加して8枚のチップを手に入れられるのは4人だけ)

そんな状態の中で、すぐに「人を殺してでも助かろう」という気持ちになれるのは、いくら落後者たちでも一部の人間で・・・その温度感がこの話の醍醐味なんだと思います。ただ、バトロワと違うのは、彼らが落後者であるということ。落後者の彼らのベースにあるのは、協調性や自信の無さ、社会や人への不信だったりします。だから、そこに本作のドラマが生まれていると思います。彼らが挫折を繰り返しながらも必死で前に進む姿は、胸に響くものがありました。

ただ、途中からは似たようなイベントが起きては、また新たなイベント・・・と間延びしてる感じもあり、ちょっと疲れたなぁ・・・と思っていたところで、なるほどな・・・という怒涛のラスト。

なんと、ラストは2パターン。書き手のパワーが分散して、つまんないラストが2本になるかと思ったのですが、そんなこともなく。それぞれのラストに対する作者の想いがきっちり描かれていて、その辺り凄く好感がもてました(二人で敵の本拠地を乗っ取るのは若干ムリがある気もしますが、そのあたりは漫画なので気にしたら負けです)

tyoshiki.hatenadiary.com

ストーリーや設定に、この本ならではのオリジナリティが強くあるわけでないのは最初に書いた通り。それでも、登場人物の葛藤や個性づくりに真摯にむきあってる作者の姿が垣間見れるからこそ、キャラが生きてくる。あとは、テンポが良い作品なので勢いよく読めます。26巻と若干長い作品ですが、2パターンに分かれたエンディングを含め、なかなか面白い作品だったと思います。

www.comicbunch.com

若干のネタバレ

最終巻が2パターン。
どちらも、きちんとまとめ上げてるから、参った。

いろいろ賛否はあった作品で、26巻とそこそこのボリュームのある作品だったけど、最後まで読み切って良かったと思う作品であることは間違いないと思います。

そう思うのは、落後者と呼ばれてた主人公たちの極限状態下での想いの強さが徹底して描かれていることです。最初は、希望的観測でどこか甘えが抜けなかった主人公も、何度も失敗し挫折を繰り返して、自分の弱さに向き合えるようになっていきます。

先に「落後者」と簡単に書きましたが、本作で殺し合いをさせられた彼らほどではなくても、人生で上手くいかなくて悩んでいる人は腐るほどいると思います。挫折を繰り返した人が自信をなくし他人に利用される前に他人を利用し・・・そうやって社会との接点を失ってしまった人を救う手立てをこの社会はもっていない。それでも、本作に出てくる彼らは、誰かのためにした行為、そしてそれに返してもらえる笑顔がどれだけ嬉しいかを死の淵で感じる。人は人でしか救えない。救ってもらうためには、誰かに真剣に向かっていくしかないことを考えさせてくれます(現実は、それでも、救われないことも多いですが)

漫画ですから、主人公たちが全員しんでゲームオーバーとはなりませんが、現実の社会では誰もがハッピーエンドを迎えるわけではありません。ちょっとした諍いで夫婦仲が憎しみになったり、友情がギクシャクしたり、職場に居場所がなくなったり・・・ちょっと狡いヤツが人生をエンジョイしてるのが苛立たしかったり、他人の成功が素直に喜べない・・・そんな事は誰にでもあると思いますが、そういう事の組み合わせちょっと失敗しただけで、坂を転がるかのように人生は詰んでいくこともあると思います。

漫画を通じて、そういう怖さに直面した時でも、見失っちゃいけない事・・・その熱さを感じられる本作は、読んで損は無いと思うのです。多くの作品を読んできた人からすれば、似たような作品・・・と批判もしてしまうのかもしれませんが、本作には本作なりの書き手の強い思いはちゃんとあると思うのです。

それを感じ取れないのは勿体ないかなぁ・・・そんなことを思った作品でした。オススメできる作品だと思います。