完結漫画ブログ

完結漫画に特化したブログです。マンガ喫茶のお供にお役立てください

時計じかけの姉/いけだたかし(全3巻)

f:id:totaraka:20181027132418j:plain

この漫画のオススメポイント

 コミュ障、ブラコン、ストーカー気質でコンプレックスのかたまりのような天才時計技師の姉と、悲しい事件で亡くなった美しい弟、その姉を心配する同級生という図で描かれるヘンタイストーリー。天才的な頭脳を持つ姉が作ったのは、死に別れた弟に瓜二つのセクサロイド。弟に模したアンドロイドが様々な男に抱かれる様子を覗いては興奮する姉・・・

情緒のある世界観は単なるエロ漫画の枠に収まらないマニアックな作品(といっても、ジャンル的には非エロな青年誌の連載なんだけども)。苦手な人は気持ち悪くて絶対に無理だろうけど、なかなか他にない作品です。大声では言いにくいけど勧めたい・・・そんな作品です。

 

私的感想

今まで、1作者1作品として完結漫画を紹介してきたのですが、今回はじめて、そのルールを逸脱することになりました。このルールで書いてたら、いつかは書くべき作品を選ぶことが難しくなるとは思っていたのですが、その時はもっとメジャーな作品になると思っていたのです。まさか、この『時計じかけの姉』を紹介することになるとは、私もまったく予想していませんでした。

前回、いけだたかし先生の作品を紹介したのは「34歳無職さん」でした。とてもホノボノした温かい作品だっただけに、そのギャップに驚かされました(ぎゃふん)。他にも先生の代表作には「ささめきこと」というものもあるのですが、これは女子高生の純愛モノで、同性の恋愛とはいえ綺麗に描かれていた作品だった。そのいけだたかし先生が、なんでこれ?って・・・はっきり言ってエロです

先に書いたように、設定が多いです。ショタ、ロボット、近親相姦、ぽっちゃり、ホモ、こじらせ、ストーキング、寝とられ・・・よくもまぁ詰め込んだ。中心キャラがこれだけ歪んでいて、これだけの要素を詰め込んで成立してるのが、とにかくすごい。

さらに、無駄にギャグも入ってくる。プレイが激しすぎると頭のとれるロボット。究極超人あーるを彷彿させるような設定が個人的にはツボだったりするけど、とにかくテンコ盛り。

 

(個人的には)エロスは生き物の根源にあるものだと思っていて、それは人それぞれ多様なものだから興味深いと思っているのだけど、時代が時代なら有害図書として扱われるかもしれない。商業誌ではなかなかチャレンジだったと思います。さすが、幻冬舎!(いい意味でw)

↓気になった方は公式サイトで試し読みができますよ↓

時計じかけの姉 - デンシバーズ

若干の…ネタバレ

時計屋の天才技師の晶は、ある事件で最愛の弟ミナトを亡くした。姉の性癖が露呈した時、生身の弟は姉を拒絶し、その結果、弟は命を奪われた。姉の歪んだ性癖は、自分の容姿に対するコンプレックスであり、自分とは似ても似つかぬ綺麗な容姿をもつ弟を通じて歪んだ欲望を満たしていたのだが、弟を亡くしたことで、姉の歪みは意固地なものになっていく。

学生時代は不良と呼ばれるような男だったツグジは、学生時代から晶のことを思い続けている純情童貞野郎。どんな晶であろうと受け止めようと翻弄するが、晶を支えるアンドロイドのミナトの存在を消化できず。

さらに、彼らが住む下町の商店街の人のよいおじさんたちは、アンドロイドのミナトの上客で、その姿態は晶に覗かれている・・・という酷い倒錯ぶり。

晶は自分のコンプレックスとどう向き合っていくのか、アンドロイドのミナトの行く末は?ツグジは晶への思いを遂げることができるのか

と、まぁ、そのあたりが物語の終着点になってくるのは予想に難くないし、結果もある程度は想定がつくと思う。ただ、その間のプロセスが、とにかく『いやらしく』て、愛おしい。

真っすぐに普通の性愛をできる人ばかりじゃない。外見のコンプレックスで内向的になる人も少なくない。ちょっとした要因で、『普通』じゃなくなってくる。

最後は若干失速気味という評を感想サイトで見かけたが、この点について僕も同意。ただ、ここまで、歪んだ性愛ぶりを詰め込んだこの作品、なかなか得難い本だと思います。こういう本が商業誌でも売られている事に嫌悪する識者もいるかもしれないが、世の中キレイ事ばかりじゃなく、いろんな性愛のカタチがあって良いんじゃないのかなぁ・・・と個人的には思うのです。