完結漫画ブログ

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ライフ/すえのぶけいこ(全20巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

壮絶なイジメをリアルに描いた本作。

周囲の顔色を窺って生きてきた主人公のアユムが、生きるために陰湿なイジメに立ち向かう姿は、ちょっと(かなり)現実的では無いけど爽快で、あっという間に読み切ってしまうかと思います。

現実の世界で、人が人を嫌悪する鬱蒼たる感情に向き合うのはなかなかシンドい事かもしれません。しかし、こういう作品を通じて負の感情から離れることのできない人間の姿を考えてみることは、生きるうえでのチカラになってくれるのではないでしょうか。

私的感想

女子高校生のイジメを扱った問題作。

読後感は、言葉にするのが難しく、何度も何度も読み返す事になりました(冊数は多いのですが、コマ割りが大きいのでサクサク読めるんですけどね)

作者も後書きで、現実的なイジメをさらに強調して描いたと述べられています(それだけ誇張しないと伝わらない、と)。確かに過激な表現が随所にみられますが、これが、”やりすぎた描き方”とは思いませんでした。イジメの本質をきちんと考えて描かれている作品だと思います(こんな悪質なイジメは無いと思っている人がいたら、それは認識不足だと思います)。

最初は、あまりに酷いイジメを繰り広げるマナミがいつ痛い目をみるんだろう、と、アユムはこの悪夢からどうやって抜け出せるんだろう・・・と、読みふけっていました。

しかし、途中から主人公のアユムがパワーアップしすぎてくるのが、個人的に気になりました。クラスの中で孤高をたもってた美来(ミク)に憧れて、彼女にふさわしい人間になりたいと思うのは分かるけど、それにしてもパワーアップしすぎ。とはいえ、立ち向かえずに登校拒否になっちゃったら漫画にならないですからね。

でも、主人公のパワーアップにつれて、敵役(マナミ)もパワーアップ。どんどん、お互いがエスカレートして・・・。

この辺りの違和感に白けちゃったって人も多いみたいだけど、テンポが早いので息つく暇なく読み切っちゃえば、その辺りも気にならないかと思います(感想書くために、何回か読み直したら、この辺りはちょっと違和感が残りましたね)

にしても、こんな風にイジメに戦える人はほとんどいないと思います(普通は、やり過ごすか逃げるしか出来ないですよ)。だから本作は、いじめられてる人に勇気をあたえる漫画というよりは、イジメなんて関係ないとおもってる人に、イジメがどれだけ人の心を狂わせるかを伝えたい漫画なのかもしれません。

 

 

若干のネタバレ

誰もが、マナミになる可能性はあるし、ミキになる可能性も、彼女らのクラスメイトになる可能性もある。もちろん、アユムになる可能性も・・・。

そんな事を考えながら読んでいました。

ちょっと目立ってしまったり、悪ふざけがひどかったり、すれちがったり勘違いだったり・・・ストレス発散だったり、キッカケは何でもいい。ただ、きもちよかったからイジメることもある。それぐらい、10代の若者の心は感じやすく不安定で脆く、簡単に攻撃的になれます。

話し言葉ひとつ取ってもそう。相手を貶める言葉が簡単に飛び交う。プリクラを撮る位置にだって仲間内でのポジションがあったりする・・・そんな年頃。

一方、大人は、というと、本作で描かれている教師陣のことを簡単に否定することはできないと思う。なるべく問題は起こさない方がいい・・・目を瞑れるならそうした方がいい。なるべく無難に処理したい・・・そう考えてしまうのも仕方がないかもしれません。それでも、心が著しく成長する時期の子供たちに対して、大人は責任があるのだから、事なかれで済まして済む問題ではありません。

身近に「いじめ」を体験してきた人なら、それがどれだけ人の心を壊すかを知っていますが、世の中にはそれを知らない人もいます。そういう人に本作は分かり易い手引書になるかもしれません。

現実には、ミキのように友達のために一緒に戦うことも難しいし、アユムのように立ち向かうことも難しい。

集団にいれば、どうしても澱がよどむ場所も生じる。その解決は、まず知る事。痛みを苦しみを想像すること。本作は、きちんとその役目を果たしているとおもいます。