完結漫画ブログ

完結漫画に特化したブログです。マンガ喫茶のお供にお役立てください

まっしろけ/竹谷州史(全3巻)

f:id:totaraka:20180820002614j:plain

この漫画の概要・オススメポイント

世の為、人の為に生きてきた両親の薫陶あつく生きてきた主人公、真白は、絵に描いたようなお人よし。しかし、真白の運んだ鞄が爆発して両親は帰らぬ人になる。天涯孤独になった真白が進んでいく道は?

身寄りもない真白がいろんな人に出会い、相手に向かい合っていくうちに世界は少しずつ繋がっていく…もし、世界がこの漫画のようであればなぁ…と願わずにいられないステキな作品です。 

私的感想

飄々と生きる天涯孤独の主人公である真白が、自分の良心を信じて生き抜くヒューマンドラマです。

・・・と、言うと、綺麗事を絵に描いたような作品に思えるかもしれないですが、光だけでなく、どうしようもない闇に悩み、それでも前に進んでいこうとする主人公を描こうとする作者の強い思いが感じられるいい作品でした。

世の中には光よりも闇の方が多いかもしれません。たとえば生まれた国であったり、生まれながらの貧富の差であったり、本人たちがどうにもできないような闇・・・怨念ともいえるような負の連鎖も確かにあって・・・そんななかで他人の苦しみに向き合い苦悩する真白が真摯に生きていくことで、世界一部が少しづつ良い方向に動きだしていきます。

しかし、現実は、漫画のようにうまく話が進むことなんて無いに等しく・・・光よりも闇の方が強いチカラをもっているのが現実だったりします。真白のように愚直に人を信じて生きていったら、簡単に心が朽ちてしまうことでしょう。

でも・・・世界は、少しずつでも人の良心で良くなると期待したい・・・そんなことを考えさせてくれる作品です。

少なくとも友情!勝利!あたりをうたう大手の出版社では見かけなう厳しいテーマの作品ではあるものの、作者の『これを描きたい』という気持ちが強く伝わってくる良作です。

若干のネタバレ

 先に書いたように、一言でまとめれば、心あたたまるヒューマンドラマです。ですが、すんなり上手くいく話ばかりじゃない(特に前半)。天真爛漫に生きてるように見える真白の心は、相対する闇や自分の無力さに悩んだり…彼の葛藤する姿は本当に深く練られていて、人が誰かのためにできる事の限界というものを考えさせられます。

普通は誰かが信じてくれることがチカラになったりするけど、信じてもらうことが逆に苦痛だというような深い闇をもつ相手に対して、真白はただ泣くことしかできなかったり。誰もが一人で、特別で、同じで・・・。でも、生まれた国の違いや、貧富の差だったり、そういう自分ではどうにもならない原因のせいで、想像に絶するほどの苦しみの日々を過ごさなければならない人に、真摯に向き合っても思いを届けることは難しい。

そんな世の中で、自分に出来ることを真白は探し続ける。

後半は、学校に行ってないホームレスの天才少女である凛と行動を共にするようになるのですが、話はトントンと、上手く進んでいきます。たまたま引き寄せられた古本屋で、たまたま繋がりができて・・・。凛が古本屋で引き寄せられた1冊の本の著者(変人といわれた消えた元、天才教授の老人)を探し出す。そして、その二人の天才が出会うことで話は激しく前に動きはじめる。それは、二人の天才たちが見つけ出した才能たちを、真白が自らの足で可能性を結び付けていく・・・

後半の展開は、偶然というよりはご都合主義な感じも否めないところもあります。

「漫画だしな…」

と、思えばそれまでかもしれないけど、『漫画だからこそ』希望をもちたいと思う。難しいテーマですが、本作はそれがうまくカタチになっていると思います。

自分以外の人の不幸を積極的に願う人なんて、そんな多数じゃないはずなのに、手をとって助け合うのが難しい昨今ですが、漫画にはこういう希望が描かれています。

だから漫画って素晴らしいんだよな、て事を感じさせてくれる本だと思います。