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鳥籠ノ番/陽東太郎(全4巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

クラスメイトの白鷺雲を探しに来たクラスメイト6人がたどり着いたのは、もう廃墟となった遊園地にある、鳥籠城。そこは、『選択』という行為に満ちた特殊な城。

謎のフクロウ男に眠らされた彼らが気づいた時には、首に鎖をつけられていた。フクロウ男は言う。幸せの青い鳥をみつけないと、この城から脱出できないと。城内のルールは2つ。

「二人、一組で行動」と「選んだ道は戻れない」

・・・これに反すると、首輪から杭が刺さり命を落とすことになる・・・命がけ脱出ゲームで6人の運命は?

私的感想

命がけの脱出ゲームという、最近よく見かけるサスペンスもの。

全4巻で、無駄に話を広げることなく、絶妙のバランスで話は進んでいきます。

脱出ゲーム、殺人ゲーム・・・似たような作品が多いですが、途中でペアを交換しながら進む、というモチーフのおかげで、話の幅が広がりや、それぞれの性格が上手く浮き彫りになっていて本作ならではのオリジナリティが強く打ち出されていて、気持ちよく読める作品だと思います。

物語は、黒辺銀が一日だけ付き合っていたクラスメイトの白鷺雲がいなくなったところから始まります。一人で考えに浸ることが多く独り言が多い彼は、クラスのなかではちょっと浮いた存在。その黒辺を含め6人の男女が、謎のフクロウ男の策略で、城から出られなくなった彼らが鳥籠城の謎を解き、青い鳥を探す・・・という話。

謎のフクロウ男は言います。この城は『選択』という行為に満ちているという。生も死も殺しもすべて選択の結果…運が悪いも、幸が薄いも、他人の見る目がない…も、全て適当な答えを選んだゆえの選択ミスだというフクロウ男。

なぜ、こんな理不尽な命がけのゲームを強要されなければいけないのか、この城を改造したフクロウ男の意図は?

彼らは、何もわからないまま、生きて城を出るために、城の中の様々な謎を解き、青い鳥を探します。

その間、彼らの人間関係が徐々に明らかになってくる。人の生き死にがかかっている状態で、露呈するそれぞれの本性。自分を否定するものを許さないという女、裏切り、決められない男に、人任せの無責任な男・・・

互いが信用できないような状態になった時、彼らはどういう『選択』をするのだろうか。選択を誤れば命を失いかねない。しかし、考えすぎて無難な答えに行きついてそれが正解になるのだろうか・・・

彼らの極限状態の『選択』から目が離せずに、あっという間に読み終えることと思います。ちなみに、本作、絶版になっているようですので、漫画喫茶でみかけたら、ぜひ手に取ってみてください(デジタル化されたものは手に入りますのでご安心を)。

 

若干のネタバレ

謎解き部分に関しては評価が高いのですが、最後は賛否両論が分かれるところです。否の意見として一番おおくみられたのが、結果が必然に基づかない点が多いという点と、犯人がこの事件を起こした動機付けが弱いということ。

前者に関しては、この手の作品で全てを必然で繋ぐのはムリがあると思うので仕方ないと思っています。後者については、動機は弱いかもしれませんが、犯人の異常な心理状態や、最後の駆け引きは上手かったと思います。むしろ、もっと狂気じみていれば、動機なんて取るに足らなくなったかもしれない・・・。

この脱出ゲームを仕掛けた犯人に起きた哀しい過去。そして、その事件から歪んでしまった犯人の身勝手な逆恨みに、巻き込まれた彼らのやり取りはなかなか読み応えがありました。

そして、自分の選択を最後まで悩み続けた主人公が、選んだ行動に相応の結果をどう受け止めることができるか。そのあたりが、最後すくわれる感じがしました。

とにかく、謎もバランスよいし、話のテンポもスムーズで、上手な作品だと思います。極限状態でみせる人間模様が生々しくて個人的には好きな作品ですが、本音をいえばもっと生々しい方が好き・・・でも、読み手のことを考えるとこれぐらいのバランスが丁度よい感じがします。

先にも書きましたが、もし本作を見つけたら、手にとって損はないと思います。