完結漫画ブログ

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ちいさいひと 青葉自動相談所物語/絵:夾竹桃ジン、シナリオ:水野光博、取材・企画協力:小宮純一(全6巻)

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この漫画の概要・オススメポイント

主人公相川健太、ちいさい頃に児童虐待から生き延びて大人になった過去をもつ。大人になった健太が、児童虐待で苦しんでいる子供たちのために、児童福祉司として奮闘する話。

実際に起きている児童虐待をテーマに、幼い子供たちが寂しさと恐怖を覚えながら日々を過ごす姿を描いた衝撃作です。子供をもつすべての親に、そしてこれから親になる若い人、多くの方の手にとってもらいたい作品です。

私的感想

漫画ですので、悲惨な結末にはならずに済んでいますが、現実には多くの児童虐待のニュースが流れており、また、ニュースになるのは、ほんの一部・・・という児童虐待がテーマの作品です。ですので、明るく楽しく!な作品ではありません。一話一話が深く、子供のことを真剣に考えると、胸が痛くなってしまいます。ですが、それに目を背けることなく、子供という存在が、親にとって社会にとって、どういう存在なのかをしっかり考えることのできるいい作品です。

1つ1つのケースがは数話程度でまとまっており、主人公の健太を通じていろいろな虐待にあっている子供たちや親とのかかわりが描かれています。

なお、本作の話は6巻で完結していますが、主人公の健太が自分の母親と向き合うところで終わっており、いささか拍子抜けするところはありますが、その後の話は「新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語」に引き継がれています(2018年8月24日現在、4巻まで発刊。未完)
とはいえ、一話一話に描かれている子供たちは、きちんと取材して現実にいる子たちがモデルになっており、そこから生み出された話は胸に突き刺さる作品であることは疑いようがないと思います。

にしても、これがビックコミックスピリッツのような青年誌の連載ならいざ知らず、これが少年誌(週刊サンデー)の連載だというから驚き。編集部でも意見が割れたんじゃないのかと思いますが、子供向けの雑誌に掲載することで、「もし周りにこういう子がいたら、何よりも命を大事にして相談して!」というメッセージが込められているのかもしれません。少年誌だからって、逃げてない・・・本作を作り上げた方々の強い意思を感じられる作品です。

csbs.shogakukan.co.jp

若干のネタバレ

痛々しくて読めない・・・という感想も多い本作。それだけリアルってことかと思います。漫画は娯楽だからこんな哀しい思いをしたくないという人には無理に手にとる必要は無いかと思います(必要な時期になれば読めるようになるかもしれませんし)

にしても、虐待をする親・・・。これは他人事で済ませる話じゃないです。社会全体の問題。確かに、常に笑顔で子供に接することのできる親なんて、ほんの一部だと思います。多かれ少なかれ子供にきつくあたることは皆無ではないと思います。本作では、理解できないようなおかしな親も出てきますが、ボタンを変え違えてしまってどうにもこうにもならなくなった親も描かれます。彼ら(彼女ら)とそうでない人の間に大きな違いはなく、一歩まちがえれば・・・と思う親も少なくないことだと思います。

「ちいさいひと」というのは、子供も大人と変わらずに、ちゃんと見ている同じ「ひと」であるということ。子供と同じ目線に立っているか。子供たちに何かしてあげたい思いが強くて、気づかないうちに上から見てないか・・・彼ら、ちいさなひとは、自分の想いや感情をうまく表現できないことがあるけど、まわりを一生懸命に理解しようと観察している・・・大人が思ってる以上に。だから、子供に対してじゃなくて、人に対して、本気で向かい合っていることを心から示さなければいけないって話には、唸らされました。虐待とか、そういう事だけじゃなく、子供に接する時に、それが出来てるか、を、自問自答しましたが・・・それができてる人ってどれだけいるのでしょうか。

子供のいる方は、一度、その目線を意識して話してみたら、感じ方が何か変わるかもしれません。